日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
新しい多剤耐性(メチシリン耐性)ブドウ球菌選択培地の有効性の検討
田口 文章滝 龍雄奥田 舜治菊野 理津子
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 47 巻 6 号 p. 759-765

詳細
抄録

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA)の迅速同定の為,ミュラーヒントン培地を基礎にして改良を加えたMR(SA)2培地を考案した。MRSAはセフチゾキシム等にも耐性を示す多剤耐性菌が優位である為,この培地にはメチシリン(オキサシリン)とセフチゾキシム,マンニット,卵黄,および7.5%のNaClを加えた。コアグラーゼ反応の代わりに卵黄反応を判定し,マンニット分解能も測定しうる。このMR(SA)2培地では培養温度および培養時間によるMRSAの検出頻度や生化学的反応,集落の形成には差が見られず,37C, 24時間から48時間の培養を行った。従来のブドウ球菌用培地との選択性,迅速性の比較では,セフチゾキシム感性のMRSAは培養不能であるが,臨床分離MRSA株の多くはセフチゾキシム耐性であるので,1段階の培養で大部分の多剤耐性MRSAを検出できた。オキサシリンとセフチゾキシムに耐性を示すコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase negative Staphylococcus; CNS)や,真菌やバシラス属の細菌もMR(SA)2培地上で増殖可能であるが集落の色調等で区別可能であった。
現在,一般にMRSAを検出するには,ブドウ球菌検出用培地でブドウ球菌を分離培養し,その後さらに薬剤耐性等を調べてMRSAであるか否かを決定している為に最低2日以上を要する。また,MRSA特異的な核酸の検出の為の遺伝子増幅(polymerase chain-reaction; PCR)法やリボタイピング(ribotyping)法などの方法が開発されているが,一般の病院等に普及しているとは言えない。本培地ではMRSAが100%検出できる訳ではなく,さらに改良の余地はあるが,迅速検出用の培地としては有効に使用し得る培地と考えられる。

著者関連情報
© 日本細菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top