日本細菌学雑誌
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緑膿菌サイトトキシンとサイトトキシン変換ファージに関する研究
林 哲也
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1995 年 50 巻 2 号 p. 391-401

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抄録

緑膿菌は広い細胞毒性を示す蛋白質毒素サイトトキシンを産生する。本毒素は菌体内にプロトキシンとして産生され,溶菌に伴って菌体外に放出される。その後,C末端のプロセッシングにより活性型毒素となる。本毒素はpore-forming toxinの1つとされ,細胞膜上で5量体のオリゴマーを形成することにより毒素活性を示すと考えられる。本毒素遺伝子は溶原ファージのゲノム上に存在し,ファージ変換によって毒素産生性が伝達される。サイトトキシン変換ファージの1つφCTXは,ユニークなサイトトキシン遺伝子の存在部位など特徴的なゲノム構造を有し,染色体上のセリンtRNA遺伝子上に溶原化する。また,φCTXは一定のLPSコア構造をレセプターとして認識し,この性質を利用して緑膿菌LPSコア構造を規定する遺伝子座が初めて同定された。これまでに分離したサイトトキシン変換ファージはいずれもRピオシン関連ファージと呼ばれる緑膿菌ファージ群に属し,サイトトキシン遺伝子はこのファージ群の進化過程で緑膿菌以外の菌種よりファージゲノム上に取り込まれたものと考えられる。

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