日本細菌学雑誌
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シュードモナス属細菌のトランスポゾンの解析とトランスポゾンを用いた分子遺伝学的解析
津田 雅孝
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1995 年 50 巻 4 号 p. 947-959

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抄録

多彩で強力な物質分解能を持つシュードモナス属細菌は,分解遺伝子群を大規模に再編成化させることで分解能をさらに多様化・強化させる。本属細菌の3種のプラスミド上でこのような再編成化現象を示す難分解性化合物分解遺伝子群はトランスポゾン上に担われ,いずれの分解トランスポゾンとも,ある種の薬剤・重金属耐性トランスポゾンと祖先を共通にするII型のトランスポゾンであることを述べる。さらに,これら分解トランスポゾンの成立機構と生物学的意義について考察する。一方,トランスポゾンを用いたシュードモナス属細菌の各種遺伝解析系を構築し,緑膿菌の病原因子である鞭毛や鉄獲得系の遺伝子群の構成や発現制御機構などを検討してきた。この中でも,緑膿菌が鉄獲得のために菌体外に放出するシデロフォアであるピオベルジンの産生について,環境中鉄濃度による制御機構を述べる。最近の研究により,ピオベルジンの菌体外放出系が本菌の多剤耐性を司る薬剤排出系に関わることが指摘され,また,ピオベルジンを介した鉄獲得系の発現制御は,他の病原因子の発現制御と相互作用を持っていることが明らかになってきた。

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