ロドコッカス・エクイ (Rhodococcus equi) は1∼3ケ月齢の仔馬に致死率の高い化膿性肺炎を引き起こす細胞内寄生菌である。近年, ヒトAIDS患者において結核と酷似した臨床症状を示す日和見感染症の原因菌として注目されている。最近, 私たちはロドコッカス・エクイの致死毒性が病原性プラスミドに規定されていることを明らかにした。仔馬の本症は毒力関連15-17kDa抗原を発現し, 85kb或るいは90kbの病原性プラスミドを保有する強毒株 (マウス50%致死量=106) によって引き起こされる。一方, ヒトの感染症由来株では強毒株に加え, 新たに毒力関連20kDa抗原を発現し, 79∼100kbの病原性プラスミドを保有する中等度毒力株 (50%致死量=107) が認められた。これら病原性プラスミドの脱落は, 毒力関連抗原の発現とマウス致死毒性を完全に消失させた(50%致死量>108)。本稿では本菌の病原因子に関する私たちの研究の経緯を仔馬とヒトの感染症の2つの観点から纏めた。