日本細菌学雑誌
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補体活性化レクチンRaRF
その分子構造から臨床まで
川上 正也
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1996 年 51 巻 3 号 p. 717-736

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抄録

ヒトなどの脊椎動物の体液には抗体の他に様々な異物認識蛋白が存在しており, その一部は補体を活性化するレクチンであることが明らかになってきた。補体活性化レクチンは多種類のグラム陽性と陰性の細菌, 真菌, およびウイルスの表面に存在する多糖体に結合して, 補体を活性化することによって, 食菌, 炎症, 殺菌などの防衛反応を誘起し, 微生物を排除するとともに免疫応答のための細胞を動員する。我われはすでに10数年前にユニークな補体活性化レクチン Ra-reactive factor (RaRF) を発見し, RaRFが新しい補体活性化経路 (レクチン経路) を誘導することを見いだし, その蛋白質および遺伝子の構造を明らかにしてきた。とくにRaRFの補体活性化作用は抗体に匹敵しているので, RaRFは抗体産生前の感染初期に重要な役割を果たす因子, すなわち前抗体 (ante-antibody) と考えられるようになった。さらに, そのレクチンの異常が幼児期の易感染症と関係があることが見いだされ, 世界的に注目されるようになった。

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