日本細菌学雑誌
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ウェルシュ菌における毒素産生調節機構の解析
清水 徹
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1997 年 52 巻 4 号 p. 659-670

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抄録

A型ウェルシュ菌はα-毒素, θ-毒素, κ-毒素など, さまざまな毒素を産生し, これら毒素の協調的作用によってガス壊疽などの感染症を引き起こす。これら毒素の産生調節機構を解明することは本菌の病原性を理解する上で非常に重要と考えられ, 本研究では, ウェルシュ菌の毒素産生調節機構についてθ-毒素遺伝子の発現調節を中心として解析した。θ-毒素遺伝子, pfoAはその上流のpfoRによりシス優位に正に調節され, pfoR遺伝子はまた, 二成分制御系遺伝子, virR/virS遺伝子により正に調節されていることが明らかとなった。virR/virS遺伝子はそれぞれレスポンスレギュレーターとセンサーヒスチジンキナーゼをコードし, 外界の刺激をリン酸化を介して細胞内に伝達し, 本菌の病原性を調節するものと考えられ, θ-毒素以外にもα-毒素, κ-毒素, 血球凝集素, ヒアルロニダーゼ, プロテアーゼの産生をも調節することが判明した。これらのうちα-毒素, θ-毒素, κ-毒素遺伝子についてそのプロモーター構造を決定したところ, θ-毒素, κ-毒素遺伝子にはVirR/VirSに依存するプロモーターと構成的に発現されるものとが存在したのに対し, α-毒素遺伝子にはVirR/VirSによって増強される一つの構成的プロモーターが同定された。これらのプロモーター付近にはVirR/VirSシステムが認識して結合すると考えられる共通DNA配列が存在せず, pfoRpfoAの関係のようなさらに複雑な調節カスケードが存在することが示唆された。

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