2025 Volume 27 Issue 1 Pages 19-29
サツマイモ(Ipomoea batatas (L.) Lam.)の栽培が盛んな南九州では,近年,サツマイモ基腐病(以下,基腐病)による深刻な被害が生じている.基腐病は日本では2018年に初めて確認された病害であるため,日本で栽培されている品種の本病に対する抵抗性についての知見はない.そこで,本研究では2020年および2021年の2年間,基腐病の発生が激しい圃場で47の品種(主要15品種,参考32品種)を栽培し,抵抗性を評価した.5月上旬の植え付けから10月上旬の収穫まで,暗褐色~黒色に変色した茎の病変部の位置および病変長を継時的に計測し,茎葉発病度,基部発病株率,枯死株率,収穫時には塊根発病度,発病塊根重率,塊根収量を調査した.植え付け後,約2カ月前後から発病が認められ,生育期間が長くなるに従って発病は進み,主要な15品種間には,茎葉発病度,基部発病株率に有意な品種間差が認められた(p < 0.05).また,茎葉発病度と基部発病株率の間には高い相関が認められ,基部発病株率を指標として茎葉の抵抗性の評価が可能であることが明らかとなった.塊根発病度および発病塊根重率にも有意な品種間差が認められ,品種間の収量差も顕著に現れ,地上部の発病が塊根収量に大きく影響することが明確となった.そこで,茎葉発病度および基部発病株率を重視した上で,塊根の発病程度や収量を勘案して主要15品種の抵抗性程度を評価し,参考32品種については基部発病株率から抵抗性程度を評価した.また,これらの結果に基づき,当面は,「ダイチノユメ」を“弱”,「高系14号」を“やや弱”,「アヤムラサキ」を“中”,「こないしん」と「べにまさり」を“やや強”,「タマアカネ」を“強”の指標品種にすることにした.本研究で得られた抵抗性の情報が今後の基腐病対策や抵抗性品種の育成に寄与することを期待する.
In recent years, foot rot caused by Diaporthe destruens has caused severe damage to sweetpotato in the Southern Kyushu area. In Japan, as foot rot was first observed in 2018, there is little information on foot rot resistance in varieties bred in Japan. In this study, 47 varieties (15 main and 32 reference varieties) were grown in a field infested with foot rot for two years (2020 and 2021), and evaluated for resistance to foot rot. The location and length of rotted parts of stems were measured from planting in early May to harvesting in early October, and the disease severity in vines, percentage of plants rotted at the basal part of a stem (PRS), and plant mortality were determined. After harvest, the percentage of storage roots with foot rot symptoms and the disease severity in storage roots were determined. Foot rot occurred about months after planting, and continued during the growth period, with significant differences in disease severity in the vines and PRS among main 15 varieties (P < 0.05). A high correlation was also observed between disease severity in vines and PRS, indicating that vine resistance can be evaluated using PRS as an indicator. Significant differences in disease severity in storage roots and percentage of storage roots with symptoms were also observed among varieties. Yields markedly varied among varieties, and were greatly affected by disease severity in vines. The degree of resistance of the 15 main varieties was evaluated based on the disease severity in vines and PRS on a five-point scale from ‘weak’ to ‘strong’ while also considering the disease severity in storage roots and yield. In addition, that of reference 32 varieties was evaluated based on PRS. As a result, ‘Daichinoyume’ was selected as ‘weak’, ‘Koukei No.14’ as ‘slightly weak’, ‘Ayamurasaki’ as ‘medium’, ‘Konaishin’ and ‘Benimasari’ as ‘slightly strong’, and ‘Tamaakane’ as ‘strong’ indicator varieties. These findings on resistance may contribute to future management of foot rot and the breeding of resistant varieties.
サツマイモ(Ipomoea batatas (L.) Lam.)は,日本全国で栽培されているが,サツマイモの栽培が盛んな鹿児島県と宮崎県を合わせた南九州での栽培面積は日本全体の約4割を占めており(農林水産省 2024),基幹作物として地域農業および地域経済を支える重要な役割を果たしている.ところが,2018年,沖縄および南九州においてサツマイモの株が立ち枯れ,塊根が腐敗する症状が多発し,この主因は,糸状菌Diaporthe destruens (Harter) Hirooka, Minosh. & Rossmanの感染により引き起こされる土壌伝染性病害のサツマイモ基腐病(以下,基腐病)であることが明らかとなった(小林 2019).基腐病は,約100年前にアメリカで報告され(Harter 1913),それ以降,南北アメリカ大陸,アフリカなどで被害報告があり,アジアでは2008年に台湾(Lin et al. 2017),2014年に中国(Gai et al. 2016),2015年に韓国(Paul et al. 2019)で報告されている.基腐病は日本では発生が確認されていなかったが,2018年11月に沖縄県,2018年12月に鹿児島県,2019年1月に宮崎県から相次いで病害虫発生予察特殊報が発出された(小林 2019).南九州における基腐病の被害は深刻で,焼酎原料用の「コガネセンガン」や青果用の「べにはるか」,「高系14号」,でん粉原料用の「シロユタカ」など既存の主要品種の多くが基腐病の被害を受けた.基腐病は日本全国に徐々に広がりを見せ,2020年以降,上記3県以外の33都道府県でも病害虫発生予察特殊報が発出され(2025年1月時点),全国へのまん延が危惧されている.基腐病対策の一つとして,抵抗性品種の導入が提示されており(Clark and Moyer 2013),アルゼンチンでは品種「Morada INTA」が防除対策として利用され,ブラジルの品種「Princesa」も「Morada INTA」と同程度の抵抗性を有するとの報告もある(Lopes and Silva 1993).一方,日本で栽培されている品種について,基腐病に対する抵抗性についての知見はなかった.そこで,基腐病対策として抵抗性品種の導入を提案し,さらに,抵抗性品種育成のための育種素材を選定することを目的に,2020年および2021年の2年間,基腐病の発生が激しい圃場で47品種を栽培し,継時的に発病を調査して抵抗性を評価した.
2020年と2021年の2年間,鹿児島県鹿屋市吾平町のサツマイモ生産者の圃場において基腐病抵抗性検定試験を行った.鹿屋市吾平町では「コガネセンガン」の作付けが多く,2018年以降,基腐病が多発しており,本研究を実施した検定圃場でも2019年に基腐病が圃場の全面に発生していた.検定試験には,日本で栽培されている品種の中から,主要なものとして青果用品種の「ベニアズマ」,「高系14号」,「べにはるか」,「べにまさり」,加工用品種の「アヤムラサキ」,「ムラサキマサリ」,「タマユタカ」,「タマアカネ」,焼酎原料用品種の「コガネセンガン」,「サツママサリ」,でん粉原料用品種の「シロユタカ」,「ダイチノユメ」,「コナホマレ」,「こないしん」,「こなみずき」の計15品種を選んで供試した.また,主要15品種以外にもその他に参考として32品種(表1)を供試して簡易な検定試験を行った.検定用の苗は農研機構九州沖縄農業研究センター都城研究拠点(宮崎県都城市)で育苗した.検定圃場は生分解性マルチ(2020年)または黒ポリマルチ(2021年)で被覆し,畝間95 cm,株間35 cm,試験設計は主要15品種については3反復の乱塊法とし,各品種1区あたり30株(10株,3畝)を植え付けた.参考とする32品種については,2020年は各品種1区あたり10株2反復,2021年は8株2反復の試験を行った.なお,2021年の試験では,「オキコガネ」,「ベニハヤト」,「すずほっくり」,「サツマアカネ」,「ベニオトメ」については各品種1区あたり30株,3反復の試験を行った.2020年の植付日は5月9日,収穫日は10月6日,2021年の植付日は5月6日,収穫日は10月13日であった.栽培期間中は,基腐病に影響がある薬剤散布は行わず,雑草と害虫防除のための薬剤散布のみを行った.
主要15品種以外の参考供試品種の一覧
アヤコマチ | シロサツマ | ふくむらさき |
安納こがね | スズコガネ | ベニオトメ |
安納紅 | すずほっくり | ベニコマチ |
オキコガネ | 種子島紫7 | ベニハヤト |
からゆたか | タマオトメ | ほしこがね |
クイックスイート | 潮州 | ミナミユタカ |
コガネマサリ | ときまさり | 宮農7号 |
サツマアカネ | パープルスイートロード | むらさきほまれ |
サニーレッド | ハマコマチ | 農林1号 |
ジェイレッド | ヒタチレッド | 農林2号 |
ジョイホワイト | ひめあやか |
基腐病の典型的な病徴は,株元の暗褐色~黒色の腐敗であるが,株元以外の茎でも,畝間の汚染土壌や周辺株の病変部,水で移動した胞子などに接触すると感染して発病し,腐敗する(小林 2022).このような,株基部(地際を含む株元)以外の病徴を発病指数1とした.茎基部が感染・発病すると病徴は茎先端へと進展し(発病指数2~4),やがて茎葉は黄変し,最終的に枯死する(発病指数5).供試したすべての株について,暗褐色~黒色に変色している茎の病変部を継時的に調べ,病変の位置および病変長を計測し,以下の基準に基づき茎葉の発病程度を調査した(図1).
茎葉および塊根の病徴に以下の基準で発病指数をあてはめ,発病度を算出した.茎葉の発病指数0:病徴を認めない,1:病徴が株基部を含まない,主茎および側枝に認められる,2:株基部に病変長5 cm未満の病徴が認められる,3:株基部に病変長5 cm~10 cm未満の病徴が認められる,4:株基部に病変長10 cm以上の病徴が認められる,5:株の枯死が認められる.塊根の発病指数0:病徴を認めない,1:塊根表面に変色は認められないが,萌芽が認められる,2:しょ梗の基部のみに変色が認められる,3:塊根表面の変色部の面積が全体の1/2未満,4:塊根表面の変色部の面積が全体の1/2以上,5:塊根の腐敗が進み,塊根の軟化が認められる.
茎葉の発病指数 0:病徴を認めない
1:病徴が株基部を含まない,主茎および側枝に認められる
2:株基部に病変長5 cm未満の病徴が認められる
3:株基部に病変長5 cm~10 cm未満の病徴が認められる
4:株基部に病変長10 cm以上の病徴が認められる
5:株の枯死が認められる
また,基腐病の病徴と推測される黒変した茎葉の中から,茎葉の一部をサンプリングして,黒変部に形成された柄子殻の内部に含まれている胞子の形状や,黒変部から分離した病原菌の形態から,黒変が基腐病の病原菌Diaporthe destruens (Harter) Hirooka, Minosh. & Rossmanによるものであることの確認を適時行った.
収穫後,すべての塊根について,以下の基準に基づき発病程度を調査した後,発病指数ごとに塊根重量を測定した.
塊根の発病指数 0:病徴を認めない
1:塊根表面に変色は認められないが,萌芽が認められる
2:しょ梗の基部のみに変色が認められる
3:塊根表面の変色部の面積が全体の1/2未満
4:塊根表面の変色部の面積が全体の1/2以上
5:塊根の腐敗が進み,塊根の軟化が認められる
環境や他の生物が及ぼすストレス,病原菌の感染などにより,収穫時の塊根に萌芽が見られることがあり,圃場萌芽とされる.検定圃場における圃場萌芽は主に基腐病によるものと考えられ,そのような塊根を発病指数1とした.
茎葉ならびに塊根の発病度,基部発病株率,発病塊根重率は以下の式で算出した.
発病度=Σ(発病指数別個体数×発病指数)/(調査個体数×5)×100
基部発病株率=発病指数2~5の個体数/調査個体数×100
発病塊根重率=発病指数1~5の塊根総重量/調査塊根総重量×100
また,2020年の試験では,収穫時に病徴が認められなかった主要15品種の塊根(発病指数0)を各品種10個,15°Cで貯蔵し,翌年2021年2月26日に塊根の発病を調査した.
3. 発病調査時期および発病結果の解析植え付けから収穫までの間,2020年は5月20日,同29日,6月9日,同24日,7月13日,同29日,8月11日,同24日,9月11日,同25日,10月6日,2021年は5月18日,6月9日,同21日,7月5日,同19日,8月3日,同20日,9月2日,同16日,10月12日に茎葉の発病程度を調査し,収穫時には塊根の発病程度および収量調査を行った.主要15品種の発病調査試験における茎葉および塊根の発病度,基部発病株率,発病塊根重率の品種間差異は,統計ソフトウェアJMP12(SAS Institute)を用いて,発病度はBox-cox変換,基部発病株率および発病塊根重率はアークサイン変換した後,一元配置分散分析とTukey-KramerのHSD検定を行って評価した.
2020年の試験における,茎葉発病度および基部発病株率の推移と塊根発病度および発病塊根重率を表2,枯死株率の推移を図2Aに示す.6月24日(在圃期間46日)にはすべての品種において基腐病の発病は認められなかったが,7月13日(在圃期間65日)には「ムラサキマサリ」と「こないしん」を除くすべての品種で基腐病の発病が確認され,最も茎葉発病度が高かった「コナホマレ」では18%,「ダイチノユメ」では20%の株の基部に発病が認められた(表2).7月29日(在圃期間81日)には「ダイチノユメ」では53%,「コナホマレ」では50%の株の基部に病徴が認められ,茎葉発病度はそれぞれ41,37であった.一方,「こないしん」では株基部には病徴は認められなかったが,地際から離れた部位の茎葉に発病が認められ茎葉発病度は3であった.また,「タマアカネ」の基部発病株率も1%と低く,茎葉発病度は主要15品種の中で最も低かった.供試した主要15品種の茎葉発病度は2~41,基部発病株率は0~53%と,品種によって大きく異なっており,茎葉発病度,基部発病株率ともに,有意な品種間差異が認められた(p < 0.05).生育期間の経過とともに病徴は進み,8月11日(在圃期間94日)には「ダイチノユメ」では8%,「こなみずき」では4%の株が枯死し(図2A),「こないしん」では2%の株の基部に発病が認められた(表2).8月24日(在圃期間107日)の主要15品種の基部発病株率の平均は32%,枯死株率の平均は4%となり,「ダイチノユメ」では91%の株の基部に発病が認められるとともに,26%の株が枯死し,次いで「こなみずき」では13%,「コナホマレ」では10%の株で枯死が確認された.一方で,「タマアカネ」では基部発病株率は1%のままで,枯死は認められなかった.9月11日(在圃期間125日)には,「ダイチノユメ」では79%,「こなみずき」では36%,「コナホマレ」と「ベニアズマ」では33%,「高系14号」では24%の株が枯死し,9月25日(在圃期間139日)には「ダイチノユメ」はすべての株が枯死し,「コナホマレ」でも94%の株が枯死した.一方,「タマアカネ」では基部発病株率は6%,茎葉発病度は23,「こないしん」では基部発病株率は20%,茎葉発病度は32,両品種とも枯死株率は1%で,基腐病に対する抵抗性を有することが示された.10月6日(在圃期間150日)の収穫時における主要15品種の茎葉発病度の平均は77,基部発病株率の平均は77%で,枯死株率の平均は59%であった.
主要15品種の茎葉発病度と基部発病株率の推移および塊根発病度と発病塊根重率(2020年)
7月13日 | 7月29日 | 8月11日 | 8月24日 | 9月11日 | 9月25日 | 10月6日 | 塊根発病度1) | 発病塊根重率(%) | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
茎葉発病度1) | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | |||||||||
ダイチノユメ | 11 a | 20 a | 41 a | 53 a | 63 a | 78 a | 78 a | 91 a | 93 a | 97 a | 100 a | 100 a | 100 a | 100 a | 50 a | 85 a | ||||||
コナホマレ | 14 a | 18 a | 37 a | 50 ab | 54 ab | 67 ab | 63 a | 77 ab | 81 ab | 92 a | 98 ab | 99 ab | 100 a | 100 a | 38 ab | 57 bcde | ||||||
こなみずき | 8 ab | 12 ab | 25 ab | 27 bc | 45 bc | 50 bc | 60 ab | 67 bc | 74 abc | 80 ab | 92 abc | 93 abc | 99 a | 100 a | 28 bcd | 63 abcd | ||||||
べにはるか | 5 abc | 8 abcd | 19 bc | 21 cd | 29 de | 26 cdef | 40 cd | 39 d | 54 cde | 58 bc | 77 cdef | 82 bcd | 95 ab | 98 a | 27 bcd | 79 ab | ||||||
コガネセンガン | 0 e | 1 cd | 11 cde | 9 def | 26 def | 18 defg | 33 cde | 26 def | 42 efg | 39 cde | 70 def | 66 def | 87 abcd | 87 abc | 18 cde | 42 cdef | ||||||
ベニアズマ | 2 cde | 7 abcd | 20 bc | 26 bcd | 30 de | 32 cde | 37 cd | 34 de | 54 cde | 48 cd | 83 abcd | 83 abcd | 97 ab | 98 a | 15 def | 30 efg | ||||||
高系14号 | 5 abcd | 9 abc | 16 bcd | 19 cde | 34 cd | 34 cd | 44 bc | 42 cd | 60 bcd | 59 bc | 78 bcde | 78 cde | 92 abc | 92 ab | 35 abc | 67 abc | ||||||
サツママサリ | 2 bcde | 3 bcd | 7 def | 6 ef | 17 efgh | 13 efghi | 28 def | 21 defg | 39 efgh | 37 cdef | 58 fgh | 58 def | 71 de | 70 bcd | 22 bcde | 32 efg | ||||||
ムラサキマサリ | 0 e | 0 d | 3 ef | 2 f | 16 fgh | 10 fghi | 23 ef | 11 efgh | 30 ghi | 22 defgh | 49 ghi | 48 efg | 78 cd | 83 abc | 17 def | 37 def | ||||||
アヤムラサキ | 1 de | 1 cd | 4 ef | 4 ef | 13 gh | 13 efghi | 23 ef | 18 defg | 33 fghi | 26 defg | 58 fgh | 59 def | 84 bcd | 90 ab | 5 gh | 10 ghi | ||||||
シロユタカ | 0 e | 1 cd | 11 cde | 6 ef | 24 defg | 13 defgh | 36 cde | 28 def | 45 def | 41 cd | 60 efg | 59 def | 78 cd | 77 bc | 22 bcde | 47 cdef | ||||||
タマユタカ | 3 bcde | 6 bcd | 5 ef | 6 ef | 12 h | 8 ghi | 18 f | 11 fgh | 25 i | 14 fgh | 41 hij | 36 fgh | 50 efg | 43 de | 7 fg | 27 fgh | ||||||
べにまさり | 1 de | 1 cd | 4 ef | 2 f | 10 h | 2 hi | 20 f | 4 gh | 24 i | 9 gh | 29 jk | 17 hi | 55 ef | 56 cd | 12 efg | 59 bcd | ||||||
こないしん | 0 e | 0 d | 3 ef | 0 f | 10 h | 2 hi | 22 ef | 9 fgh | 26 hi | 13 efgh | 32 ijk | 20 ghi | 35 fg | 23 ef | 5 gh | 8 hi | ||||||
タマアカネ | 1 e | 1 cd | 2 f | 1 f | 6 h | 1 i | 18 f | 1 h | 22 i | 3 h | 23 k | 6 i | 26 g | 9 f | 1 h | 3 i | ||||||
平均値 | 4 | 6 | 14 | 16 | 26 | 25 | 36 | 32 | 47 | 43 | 63 | 60 | 77 | 77 | 20 | 43 | ||||||
標準偏差 | 5 | 9 | 14 | 20 | 18 | 26 | 20 | 30 | 24 | 32 | 27 | 33 | 26 | 26 | 16 | 28 | ||||||
相関係数A2) | 0.85*** | 0.92*** | 0.94*** | 0.96*** | 0.97*** | 0.98*** | 0.97*** | 0.88*** | ||||||||||||||
相関係数B3) | 0.50*** | 0.47*** | 0.69*** | 0.56*** | 0.76*** | 0.61*** | 0.78*** | 0.67*** | 0.80*** | 0.69*** | 0.76*** | 0.63*** | 0.71*** | 0.62*** | ||||||||
相関係数C4) | 0.49*** | 0.48*** | 0.61*** | 0.64*** | 0.66*** | 0.73*** | 0.67*** | 0.78*** | 069*** | 0.80*** | 0.64*** | 0.74*** | 0.64*** | 0.67*** |
1) 茎葉発病度および塊根発病度は0~100の値を示す.
2) 相関係数Aは茎葉発病度と基部発病株率間,塊根発病度と発病塊根重率間の相関係数をそれぞれ示す.
3) 相関係数Bは茎葉発病度と塊根発病度間,基部発病株率と発病塊根重率間の相関係数をそれぞれ示す.
4) 相関係数Cは茎葉発病度と発病塊根重率間,基部発病株率と塊根発病度間の相関係数をそれぞれ示す.
品種間で異なる英小文字を付した平均値間にはTukey-KramerのHSD検定により,有意水準5%で差がある.***は0.1%水準で相関関係が有意であることを示す.
サツマイモ基腐病発生圃場に苗を植え付け,継時的に茎葉の枯死を調査した.A:2020年,B:2021年の枯死株率,グラフ上のバーは標準誤差を示す.
収穫後の塊根について塊根発病度,発病塊根重率,発病指数ごとの収量を算出した.塊根発病度,発病塊根重率において有意な品種間差が認められ(p < 0.05),最も塊根の被害が大きかったのは「ダイチノユメ」で,塊根発病度は50,発病塊根重率は85%,病徴が認められなかった見かけ健全塊根(発病指数0)収量は17 kg/aと極めて低かった(表2,図3A).一方,最も被害が少なかった「タマアカネ」の塊根発病度は1,発病塊根重率は3%,見かけ健全塊根収量は460 kg/a,次いで「こないしん」では塊根発病度は5,発病塊根重率は8%,見かけ健全塊根収量は370 kg/aであった.
A:2020年10月6日,B:2021年10月12日に収穫した塊根を,発病指数ごとに分けた後,それぞれの収量を測定した.
茎葉発病度と基部発病株率間の相関係数は全調査期間を通じて0.85~0.98,塊根発病度と発病塊根重率間の相関係数は0.88で,両者ともに非常に高い相関を示した(p < 0.001)(表2).茎葉発病度と塊根発病度間の相関係数は0.50~0.80,基部発病株率と発病塊根重率間の相関係数は0.47~0.69,茎葉発病度と発病塊根重率間の相関係数は0.49~0.69,基部発病株率と塊根発病度間の相関係数は0.48~0.80で,いずれにおいても9月11日の相関が最も高かった.
収穫後,143日間貯蔵した塊根の発病について調査した結果を表3に示す.収穫時に見かけ上健全の塊根であっても,貯蔵中に基腐病が発病し,「ダイチノユメ」と「こなみずき」ではすべての塊根で病徴が認められた.一方,「タマアカネ」では発病塊根は認められず,「ムラサキマサリ」と「べにまさり」も発病塊根率は10%と低かった.それに対して,収穫時の発病塊根重率が「タマアカネ」に次いで低かった「こないしん」の貯蔵後の発病塊根率は「コガネセンガン」と同じ50%であった.主要15品種の収穫時における塊根発病度と貯蔵後の塊根発病度間の相関係数は0.6で弱い相関が認められたが(p < 0.05),収穫時の発病塊根重率と貯蔵後の発病塊根率間には有意な相関は認められなかった.
主要15品種の貯蔵後の塊根発病度および発病塊根率
品種名 | 塊根発病度1) | 発病塊根率(%) |
---|---|---|
ダイチノユメ | 95 | 100 |
コナホマレ | 68 | 70 |
こなみずき | 100 | 100 |
べにはるか | 60 | 60 |
コガネセンガン | 42 | 50 |
ベニアズマ | 82 | 90 |
高系14号 | 62 | 70 |
サツママサリ | 60 | 60 |
ムラサキマサリ | 10 | 10 |
アヤムラサキ | 68 | 70 |
シロユタカ | 24 | 30 |
タマユタカ | 30 | 50 |
べにまさり | 10 | 10 |
こないしん | 46 | 50 |
タマアカネ | 0 | 0 |
平均値 | 51 | 45 |
1) 塊根発病度は0~100の値を示す.
2021年の試験における,茎葉発病度および基部発病株率の推移と塊根の発病度および発病塊根重率を表4に,枯死株率の推移を図2Bに示す.6月21日(在圃期間46日)にはすべての品種において基腐病の発病は認められなかったが,7月5日(在圃期間60日)には「シロユタカ」を除くすべての品種で基腐病の発病が確認され,最も発病度が高かった「ダイチノユメ」では14%,「コナホマレ」では11%の株の基部に発病が認められた(表4).7月19日(在圃期間74日)には「ダイチノユメ」では52%,「コナホマレ」では43%の株の基部に病徴が認められ,茎葉発病度はそれぞれ34,29であった.「タマアカネ」と「ムラサキマサリ」の茎葉発病度は両品種ともに1,基部発病株率は2%と低く,供試した主要15品種の茎葉発病度は1~34,基部発病株率は2~52%と,品種によって大きく異なり,茎葉発病度,基部発病株率ともに,有意な品種間差異が認められた(p < 0.05).生育期間の経過とともに病徴は進み,8月20日(在圃期間106日)における主要15品種の基部発病株率の平均は51%と半数を超え,枯死株率は21%であった.特に病徴が激しかった品種としては,8月3日(在圃期間89日)に「ダイチノユメ」では枯死株が3%,「コナホマレ」では枯死株が6%であったものが,8月20日(在圃期間106日)には,「ダイチノユメ」では枯死株が84%,「コナホマレ」では76%と,17日間で急激に病徴が進展した(図2B).一方,「タマアカネ」では8月20日(在圃期間106日)の基部発病株率は3%,「こないしん」では17%であり,いずれの品種も枯死した株はなく,抵抗性を示すことが確認できた.10月12日(在圃期間159日)の収穫までの間に,すべての品種で病徴が進み,主要15品種の収穫時における茎葉発病度と基部発病株率の平均は85,84%で,枯死株率の平均は80%であった.
主要15品種の茎葉発病度と基部発病株率の推移および塊根発病度と発病塊根重率(2021年)
7月5日 | 7月19日 | 8月3日 | 8月20日 | 9月2日 | 9月16日 | 10月12日 | 塊根発病度1) | 発病塊根重率(%) | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
茎葉発病度1) | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | 茎葉発病度 | 基部発病株率(%) | |||||||||
ダイチノユメ | 9 a | 14 a | 34 a | 52 a | 62 ab | 81 a | 92 a | 93 ab | 100 a | 100 a | 100 a | 100 a | 100 a | 100 a | 64 ab | 91 ab | ||||||
コナホマレ | 7 ab | 11 ab | 29 ab | 43 ab | 62 a | 83 a | 91 a | 97 a | 100 a | 100 a | 100 a | 100 a | 100 a | 100 a | 67 a | 88 ab | ||||||
こなみずき | 4 ab | 4 ab | 19 abc | 21 bcd | 40 bc | 47 bc | 72 ab | 81 bc | 90 ab | 92 ab | 94 a | 96 a | 100 a | 100 a | 54 abc | 90 ab | ||||||
べにはるか | 4 ab | 7 ab | 11 cde | 14 cde | 40 c | 56 ab | 69 b | 82 bc | 83 ab | 90 abc | 95 a | 98 a | 100 a | 100 a | 49 abc | 95 a | ||||||
コガネセンガン | 4 a | 8 ab | 13 bcd | 17 cd | 37 c | 46 bc | 65 b | 70 cd | 89 ab | 90 abc | 97 a | 97 a | 100 a | 100 a | 52 abc | 84 abc | ||||||
ベニアズマ | 2 ab | 4 ab | 12 cde | 20 bcd | 26 cde | 33 bcd | 54 bc | 61 cde | 73 bc | 76 bcd | 90 a | 93 ab | 100 a | 100 a | 40 c | 77 bcd | ||||||
高系14号 | 5 a | 10 ab | 15 bcd | 25 bc | 28 cd | 35 bcd | 53 bc | 60 cde | 73 bc | 75 cd | 93 a | 96 a | 100 a | 100 a | 53 abc | 88 ab | ||||||
サツママサリ | 2 ab | 2 ab | 4 efg | 9 cdef | 19 def | 23 cde | 41 cd | 46 def | 55 cd | 60 def | 72 b | 78 bc | 96 a | 97 a | 46 bc | 68 cde | ||||||
ムラサキマサリ | 0 ab | 1 ab | 1 g | 2 f | 8 fgh | 13 def | 32 de | 39 efg | 55 cd | 62 de | 67 bc | 76 c | 96 a | 96 a | 42 c | 77 bcd | ||||||
アヤムラサキ | 2 ab | 4 ab | 8 cdef | 12 cdef | 13 efg | 19 cde | 27 de | 31 fg | 42 de | 47 efg | 66 bc | 73 c | 96 a | 96 a | 17 d | 41 fg | ||||||
シロユタカ | 0 b | 0 b | 5 efg | 7 def | 12 efg | 10 ef | 28 de | 24 fg | 36 de | 33 fg | 51 cd | 45 d | 74 b | 69 bc | 18 d | 32 g | ||||||
タマユタカ | 1 ab | 2 ab | 2 fg | 3 ef | 6 gh | 9 ef | 25 de | 31 fg | 34 e | 40 efg | 47 d | 57 cd | 68 b | 72 bc | 19 d | 46 efg | ||||||
べにまさり | 2 ab | 3 ab | 6 defg | 10 cdef | 12 fg | 19 def | 23 e | 27 fg | 32 e | 32 g | 46 d | 47 d | 76 b | 72 b | 21 d | 56 def | ||||||
こないしん | 1 ab | 2 ab | 4 efg | 7 def | 8 fgh | 9 ef | 17 e | 17 g | 27 e | 28 g | 33 de | 34 d | 50 c | 52 c | 18 d | 32 g | ||||||
タマアカネ | 0 ab | 1 b | 1 g | 2 f | 1 h | 2 f | 3 f | 3 h | 6 f | 4 h | 15 e | 9 e | 20 d | 10 d | 4 e | 8 h | ||||||
平均値 | 3 | 5 | 11 | 16 | 25 | 32 | 46 | 51 | 60 | 62 | 71 | 73 | 85 | 84 | 38 | 65 | ||||||
標準偏差 | 5 | 8 | 12 | 17 | 21 | 28 | 28 | 31 | 31 | 32 | 28 | 30 | 25 | 27 | 21 | 29 | ||||||
相関係数A1) | 0.93*** | 0.96*** | 0.96*** | 0.97*** | 0.97*** | 0.96*** | 0.98*** | 0.92*** | ||||||||||||||
相関係数B1) | 0.38*** | 0.38*** | 0.59*** | 0.56*** | 0.77*** | 0.69*** | 0.86*** | 0.80*** | 088*** | 0.82*** | 0.86*** | 0.86*** | 0.78*** | 0.82*** | ||||||||
相関係数C1) | 0.42*** | 0.35*** | 0.59*** | 0.58*** | 0.74*** | 0.72*** | 0.81*** | 0.84*** | 084*** | 0.86*** | 0.84*** | 0.85*** | 0.81*** | 0.79*** |
1) 茎葉発病度および塊根発病度は0~100の値を示す.
2) 相関係数Aは茎葉発病度と基部発病株率間,塊根発病度と発病塊根重率間の相関係数をそれぞれ示す.
3) 相関係数Bは茎葉発病度と塊根発病度間,基部発病株率と発病塊根重率間の相関係数をそれぞれ示す.
4) 相関係数Cは茎葉発病度と発病塊根重率間,基部発病株率と塊根発病度間の相関係数をそれぞれ示す.
品種間で異なる英小文字を付した平均値間にはTukey-KramerのHSD検定により,有意水準5%で差がある.***は0.1%水準で相関関係が有意であることを示す.
収穫後の塊根について塊根発病度,発病塊根重率,発病程度ごとの収量を算出した.いずれにおいても主要15品種間に有意な品種間差が認められ,最も塊根の被害が大きかったのは「コナホマレ」で塊根発病度は67,発病塊根重率は88%,病徴が認められなかった見かけ健全塊根収量は7 kg/aと極めて低かった(表4,図3B).一方,最も被害が少なかった「タマアカネ」の塊根発病度は4,発病塊根重率は8%,見かけ健全塊根収量は342 kg/aであり,次いで「こないしん」では塊根発病度は18,発病塊根重率は32%,見かけ健全塊根収量は272 kg/aであった.
茎葉発病度と基部発病株率間の相関係数は全調査期間を通じて0.93~0.98,塊根発病度と発病塊根重率間の相関係数は0.92で,両者ともに非常に高い相関を示した(p < 0.001)(表4).一方,茎葉発病度もしくは基部発病株率と塊根発病度もしくは発病塊根重率,それぞれの間の相関係数は全調査期間を通じて0.35~0.86であり,8月下旬以降は高い相関を示した(p < 0.001).
3. 2020年と2021年の主要15品種の茎葉発病度と基部発病株率の解析2020年および2021年それぞれにおいて主要15品種の茎葉発病度および基部発病株率の平均値の標準偏差が最も大きかったのは,2020年は9月25日,2021年は9月2日であり,いずれも「ダイチノユメ」の茎葉発病度および基部発病株率が100に達した調査日であった(表2,表4).この調査日における主要15品種の茎葉発病度間および基部発病株率間の相関関係を調べたところ,茎葉発病度の相関係数は0.94,基部発病株率の相関係数は0.92と非常に高く,2カ年の結果は非常に高い相関を示した(p < 0.001)(図4).そこで,2020年9月25日と2021年9月2日における主要15品種の茎葉発病度および基部発病株率の平均値を算出し,平均値の値が0以上20未満,20以上40未満,40以上60未満,60以上80未満,80以上の5段階にグループ分けした.5つに分けたそれぞれのグループ内において,茎葉発病度および基部発病株率に有意な品種間差はなく,「タマアカネ」,「シロユタカ」,「コガネセンガン」の茎葉発病度,「べにまさり」,「シロユタカ」,「コガネセンガン」の基部発病株率の2カ年の結果は他の品種と比べてばらつきが大きかったが,抵抗性の程度が2段階異なる品種間では,「べにはるか」を除き,有意な差が認められた(p < 0.05)(図5).そこで,茎葉発病度および基部発病株率の平均値に基づくグループ分けを重視した上で,生育期間中の発病の推移,塊根発病度,発病塊根重率,収量を勘案して“弱”,“やや弱”,“中”,“やや強”,“強”の5段階で抵抗性を判定した(図5).
2020年9月25日と2021年9月2日のA:茎葉発病度およびB:基部発病株率の相関関係を解析した.***は有意水準0.1%で有意であることを示す.
グラフ上のバーは標準誤差を示す(n = 2).品種間で異なる英小文字を付した平均値間にはTukey-KramerのHSD検定により,有意水準5%で差があることを示す.
2021年および2022年の試験における,基部発病株率の推移および抵抗性の判定結果を表5に示す.この結果を受け,抵抗性の判定は,2020年9月25日,2021年9月2日の基部発病株率を重視した上で,生育期間中の基部発病株率の推移を勘案して行うこととした.参考32品種の中には,2カ年とも抵抗性が“やや強”以上の品種が9品種存在した.
参考32品種および指標品種の基部発病株率の推移および抵抗性の判定
品種名 | 基部発病株率(%) 2020年 |
判定 | 基部発病株率(%) 2021年 |
判定 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
7/29 | 9/11 | 9/25 | 10/6 | 7/5 | 8/3 | 9/2 | 10/12 | |||
*ジョイホワイト | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 5 ± 5 | 強 | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 6 ± 6 | 44 ± 31 | 強 |
*オキコガネ | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 5 ± 5 | 5 ± 5 | 強 | 0 ± 0 | 2 ± 1 | 9 ± 1 | 18 ± 4 | 強 |
*ベニハヤト | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 5 ± 5 | 5 ± 5 | 強 | 0 ± 0 | 1 ± 1 | 1 ± 1 | 5 ± 3 | 強 |
*種子島紫7 | 0 ± 0 | 11 ± 1 | 11 ± 1 | 11 ± 1 | 強 | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 21 ± 8 | 強 |
*宮農7号 | 5 ± 5 | 10 ± 10 | 15 ± 5 | 25 ± 25 | やや強 | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 13 ± 0 | 31 ± 19 | 強 |
*サツマアカネ | 5 ± 5 | 5 ± 5 | 10 ± 0 | 30 ± 0 | やや強 | 0 ± 0 | 3 ± 2 | 5 ± 2 | 6 ± 3 | 強 |
*すずほっくり | 0 ± 0 | 5 ± 5 | 15 ± 15 | 21 ± 9 | やや強 | 0 ± 0 | 19 ± 6 | 24 ± 5 | 44 ± 8 | やや強 |
*サニーレッド | 5 ± 5 | 16 ± 4 | 16 ± 4 | 21 ± 1 | やや強 | 0 ± 0 | 6 ± 6 | 19 ± 6 | 88 ± 0 | やや強 |
*潮州 | 0 ± 0 | 5 ± 5 | 10 ± 10 | 50 ± 10 | やや強 | 0 ± 0 | 13 ± 0 | 13 ± 0 | 44 ± 6 | やや強 |
スズコガネ | 10 ± 0 | 40 ± 10 | 60 ± 20 | 60 ± 20 | 中 | 0 ± 0 | 0 ± 0 | 19 ± 19 | 63 ± 13 | やや強 |
農林1号 | 5 ± 5 | 20 ± 10 | 30 ± 20 | 45 ± 15 | 中 | 0 ± 0 | 19 ± 6 | 56 ± 6 | 94 ± 6 | 中 |
からゆたか | 0 ± 0 | 25 ± 15 | 65 ± 5 | 85 ± 5 | 中 | 0 ± 0 | 19 ± 6 | 50 ± 0 | 88 ± 0 | 中 |
コガネマサリ | 0 ± 0 | 30 ± 10 | 60 ± 30 | 70 ± 20 | 中 | 0 ± 0 | 19 ± 6 | 69 ± 19 | 100 ± 0 | やや弱 |
クイックスイート | 10 ± 0 | 30 ± 20 | 60 ± 10 | 80 ± 0 | 中 | 7 ± 7 | 7 ± 7 | 73 ± 2 | 100 ± 0 | やや弱 |
ハマコマチ | 20 ± 10 | 45 ± 15 | 65 ± 5 | 85 ± 5 | やや弱 | 0 ± 0 | 13 ± 13 | 31 ± 6 | 75 ± 13 | やや強 |
ベニオトメ | 20 ± 0 | 50 ± 10 | 70 ± 0 | 80 ± 10 | やや弱 | 3 ± 0 | 21 ± 1 | 56 ± 2 | 93 ± 2 | 中 |
タマオトメ | 15 ± 5 | 50 ± 20 | 65 ± 15 | 70 ± 10 | やや弱 | 6 ± 6 | 31 ± 6 | 50 ± 25 | 88 ± 13 | 中 |
シロサツマ | 16 ± 6 | 44 ± 34 | 64 ± 24 | 75 ± 25 | やや弱 | 6 ± 6 | 38 ± 25 | 69 ± 19 | 88 ± 13 | やや弱 |
むらさきほまれ | 10 ± 10 | 35 ± 25 | 75 ± 5 | 85 ± 15 | やや弱 | 0 ± 0 | 31 ± 19 | 75 ± 13 | 100 ± 0 | やや弱 |
ヒタチレッド | 0 ± 0 | 53 ± 13 | 79 ± 1 | 79 ± 1 | やや弱 | 0 ± 0 | 25 ± 13 | 50 ± 13 | 81 ± 19 | やや弱 |
安納こがね | 25 ± 15 | 60 ± 20 | 65 ± 15 | 100 ± 0 | やや弱 | 0 ± 0 | 38 ± 0 | 94 ± 6 | 100 ± 0 | やや弱 |
ジェイレッド | 25 ± 15 | 55 ± 5 | 80 ± 0 | 95 ± 5 | やや弱 | 0 ± 0 | 31 ± 6 | 63 ± 13 | 100 ± 0 | やや弱 |
ミナミユタカ | 5 ± 5 | 45 ± 15 | 85 ± 5 | 95 ± 5 | やや弱 | 19 ± 6 | 50 ± 0 | 75 ± 0 | 94 ± 6 | やや弱 |
ひめあやか | 15 ± 5 | 65 ± 5 | 85 ± 15 | 90 ± 10 | やや弱 | 0 ± 0 | 19 ± 6 | 69 ± 6 | 81 ± 6 | やや弱 |
安納紅 | 30 ± 10 | 60 ± 10 | 95 ± 5 | 100 ± 0 | 弱 | 0 ± 0 | 7 ± 7 | 54 ± 17 | 100 ± 0 | 中 |
ふくむらさき | 50 ± 0 | 80 ± 20 | 90 ± 10 | 90 ± 10 | 弱 | 13 ± 0 | 50 ± 0 | 94 ± 6 | 100 ± 0 | 弱 |
アヤコマチ | 37 ± 3 | 74 ± 4 | 95 ± 5 | 95 ± 5 | 弱 | 13 ± 13 | 56 ± 31 | 81 ± 6 | 94 ± 6 | 弱 |
ベニコマチ | 25 ± 15 | 65 ± 25 | 95 ± 5 | 95 ± 5 | 弱 | 13 ± 0 | 56 ± 6 | 81 ± 6 | 94 ± 6 | 弱 |
パープルスイートロード | 55 ± 5 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 | 13 ± 0 | 94 ± 6 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 |
農林2号 | 50 ± 10 | 85 ± 5 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 | 31 ± 19 | 69 ± 19 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 |
ときまさり | 26 ± 14 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 | 25 ± 13 | 56 ± 6 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 |
ほしこがね | 10 ± 0 | 80 ± 0 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 | 6 ± 6 | 56 ± 6 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 |
(指標) タマアカネ |
1 ± 1 | 3 ± 0 | 6 ± 1 | 9 ± 3 | 強 | 1 ± 1 | 2 ± 1 | 4 ± 1 | 10 ± 4 | 強 |
こないしん | 0 ± 0 | 13 ± 4 | 20 ± 0 | 23 ± 2 | やや強 | 2 ± 1 | 9 ± 3 | 28 ± 5 | 52 ± 4 | やや強 |
べにまさり | 2 ± 1 | 9 ± 1 | 17 ± 7 | 56 ± 21 | やや強 | 3 ± 3 | 19 ± 11 | 32 ± 14 | 72 ± 9 | やや強 |
アヤムラサキ | 4 ± 1 | 26 ± 4 | 59 ± 1 | 90 ± 0 | 中 | 4 ± 2 | 19 ± 3 | 47 ± 2 | 96 ± 2 | 中 |
高系14号 | 19 ± 3 | 59 ± 2 | 78 ± 2 | 92 ± 3 | やや弱 | 10 ± 3 | 35 ± 3 | 75 ± 11 | 100 ± 0 | やや弱 |
ダイチノユメ | 53 ± 3 | 97 ± 2 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 | 14 ± 8 | 81 ± 9 | 100 ± 0 | 100 ± 0 | 弱 |
表中の数値は基部発病株率の平均値 ± 標準誤差を示す(n = 2,指標品種および2021年の「オキコガネ」,「ベニハヤト」,「すずほっくり」,「サツマアカネ」,「ベニオトメ」はn = 3).
*を付した品種は,2カ年とも抵抗性が“やや強”以上の品種を示す.
本研究では,2018年に日本で初めて発生が確認された基腐病に対する日本の品種の抵抗性を評価するため,2020年および2021年の2年間,基腐病発生圃場において47品種の基腐病抵抗性検定を行った.
2020年は植え付け65日後の7月13日,2021年は60日後の7月5日に初発が確認され,基腐病の発生が激しい圃場においては,植え付け後,約2カ月前後から抵抗性の弱い品種では発病が認められることが分かった.また,品種によって発病の程度は異なるが,生育期間が長くなるに従って発病が進み,今回供試した品種の中には,基腐病に全く感染しない品種はないことが明らかとなった.基腐病の病変部には柄子殻が多数形成され,雨水による湛水や跳ね上がりなどにより胞子が漏出・拡散し,本病のまん延を引き起こすことが知られている(小林 2022).基腐病に最も弱かった「ダイチノユメ」では2020年9月25日に茎葉発病度および基部発病株率が100になったのに対して,2021年は9月2日にはそれぞれが100になっており,2020年と2021年を比較すると,2021年の方が基腐病の拡大する時期は早まっていた(表2,表4).2020年と2021年の気象状況をアメダス情報(地点:鹿屋市)から比較すると,平均気温には2020年と2021年では大きな違いはなかったが,降水量には顕著な違いがあった.2020年は7月上旬(積算降水量1,148 mm,2021年同113 mm)と9月上旬(積算降水量286 mm,2021年同12 mm)に降水量が多く,2021年は8月上旬~中旬(積算降水量556 mm,2020年同25 mm)と9月中旬(積算降水量325 mm,2020年同142 mm)に降水量が多かった.2020年7月上旬は,基腐病の初発と同時期であり,主要15品種の茎葉発病度の平均は4,と低かったためこの時期の降雨が基腐病のまん延に大きな影響を与えることはなかったが,2021年8月上旬は主要15品種の茎葉発病度の平均が25,基部発病株率は30%を超えた時期に相当するため,この時期の多雨が基腐病のまん延を引き起こし,被害の早期化に影響を与えたものと推測される.2020年と2021年で発病の推移は異なっていたが,「ダイチノユメ」の茎葉発病度および基部発病株率が100に達した2020年9月25日と2021年9月2日における主要15品種の茎葉発病度および基部発病株率の相関を調べると,相関係数はそれぞれ0.94,0.92と非常に高く,2年間の圃場試験において主要15品種間の相対的な発病の程度は変わっていないことが示された(図4).一方で,「シロユタカ」や「コガネセンガン」は,他の品種と比較すると茎葉発病度および基部発病株率の年次間差が大きく,正確な評価のためには,更なる評価が必要であることも推察された(図5).サツマイモ立枯病(藏之内ら 2014),サツマイモつる割病,サツマイモ黒斑病など,圃場で行う抵抗性検定には年次変動や区間変動が生じるため,正確な抵抗性の評価のためには複数年の試験が必要であるが,基腐病についても同様である.抵抗性の評価は,病徴の程度に基づき算出する茎葉発病度で評価することが最も適切であると考えられるが,1~2 m以上伸長し,絡み合った茎の病変の位置および病変長を計測するには多大な労力を必要とする.2020年7月13日~10月6日までの茎葉発病度と基部発病株率の相関係数は0.85~0.98,2021年7月5日~10月12日までの相関係数は0.93~0.98,と両者の相関は非常に高かったため,茎葉発病度でなく基部発病株率を指標としても,茎葉の抵抗性の評価が可能であることが明らかとなった.基部発病株率の調査は,調査時間が短くて済む,調査時に茎葉を傷つけにくい,といったメリットがあるため,多数の品種・系統を扱う育種現場においては基部発病株率を指標とすることを提案する.
塊根の被害程度を明らかにするため,塊根発病度,発病塊根重率,発病程度ごとの収量を評価したが,塊根発病度および発病塊根重率には有意な品種間差が認められ(p < 0.05),また,塊根発病度と発病塊根重率間には相関係数0.88(2020年),0.92(2021年)と非常に高い相関が認められた.同様に,収量に関しても顕著な品種間差が認められた(図3).でん粉原料用の「ダイチノユメ」,「コナホマレ」,「こないしん」の育成地(基腐病未発生地)における収量は,でん粉原料用の主力品種「シロユタカ」よりも1~2割多い(Katayama et al. 2017, 小林ら 2024).しかし,基腐病発生圃場においては,茎葉の被害が大きかった「ダイチノユメ」では,「シロユタカ」比で,全塊根収量は41~43%,外観健全塊根収量は7~9%,「コナホマレ」では,全塊根収量は「シロユタカ」比26~28%,外観健全塊根収量は5~12%と著しく低く,一方,茎葉の被害が少なかった「こないしん」では,「シロユタカ」比で全塊根収量は170~182%,外観健全塊根収量は182~220%と2倍近くあったことから,地上部の発病が塊根収量に大きく影響することが明確となった(図3).サツマイモでは光合成で作られた糖が根に転流し,でん粉として蓄積されることで塊根になるため,茎葉が萎凋・枯死することにより塊根収量が低下することは当然なことである.また,今回供試した主要15品種の中には,塊根での発病が認められなかった品種は存在せず,8月~9月の茎葉発病度と10月収穫の塊根発病度の間には高い相関が認められた(表2,表4).地際の茎基部が基腐病に感染し発病すると,そこから地下部の茎,しょ梗,塊根へと病徴が進展し,時間の経過とともに塊根は,なり首側から腐敗するため(小林 2022),茎葉発病度と塊根発病度の間に高い相関があることは妥当と考えられる.一方,品種群としてではなく,品種ごとに見ると,「アヤムラサキ」では,茎葉の発病程度に比べて,塊根の発病程度が低い傾向が認められた.「アヤムラサキ」の塊根発病度は,「アヤムラサキ」と同程度の茎葉発病度を示した「ムラサキマサリ」よりも低く,茎葉の発病が少ない「こないしん」並みであった.その原因は明らかではないが,「アヤムラサキ」では,塊根への病原菌の侵入阻害や病徴の進展阻害などが起こり,塊根での発病が抑制されていることが推察される.茎葉と塊根で抵抗性の程度が異なる可能性については,「アヤムラサキ」以外の品種も含め,今後,明らかにしていく必要がある.西岡ら(2021)は基腐病汚染圃場で収穫した外観上無病徴な「コガネセンガン」の塊根が貯蔵中に腐敗したことから,潜在感染の可能性を推測しているが,本研究においても,「タマアカネ」を除く14の品種で収穫時に見かけ上健全であった塊根が,貯蔵中に発病することが明らかとなった(表3).収穫時と貯蔵後の健全塊根率間には有意な相関は認められず(データ未掲載),収穫時の健全塊根率が高かった「こないしん」でも貯蔵後は「コガネセンガン」並みに発病していたことから,どのような品種であっても,収穫時に健全に見えても感染している可能性を考えておく必要があり,種いもを基腐病未発生圃場から採取することの重要性を再確認した.
本研究では主要15品種の抵抗性を,「ダイチノユメ」の茎葉発病度および基部発病株率が100に達した時点における,茎葉発病度と基部発病株率に,生育期間中の発病の推移および塊根発病度,発病塊根重率,収量を勘案して抵抗性の程度を“弱”~“強”の5段階で評価したが,主要品種の多くが基腐病に対して弱いことが明らかとなった(図5).「コガネセンガン」(抵抗性やや弱),「べにはるか」(抵抗性弱),「高系14号」(抵抗性やや弱)の2021年の作付け比率は,鹿児島県では58%,宮崎県では91%と多くを占めており(農林水産省 2024),抵抗性が弱い品種の作付け比率が高かったことから,南九州では基腐病による深刻な被害が生じたと推察される.
基腐病の抵抗性を評価するためには,抵抗性の異なる指標品種が必要となる.本研究において,最も抵抗性が弱かった「ダイチノユメ」,抵抗性が強かった「タマアカネ」をそれぞれ,抵抗性“弱”,抵抗性“強”の指標品種とし,“やや弱”の品種としては発病の程度に年次間差が少なかった「高系14号」,“中”の品種としては,紫肉色を活かした加工用に長年利用されてきた「アヤムラサキ」,“やや強”の品種としては「こないしん」と近年南九州での作付けが増加している「べにまさり」を選定した.今後,さらに多くの品種の抵抗性が明らかになることで,指標品種を変える必要が生じることも予想されるが,当面はこれらの品種を指標にして圃場での抵抗性検定を実施していくことを提案する.圃場での抵抗性検定は,一般的な栽培条件下で行うため,実情に近い検定結果を得ることができる.一方で,年次間差や病原菌の不均一な分布に伴う区間差が生じるため,信頼性の高い結果を得るためには複数年試験を行う必要がある.検定圃場の規模によっては,十分な数の検定が行えないという課題もある.そのため,サツマイモ立枯病(小林ら 2018),サツマイモつる割病(山川ら 2022)などでは,温室などの管理された環境下で行う室内検定法が開発されている.Tabuchi et al.(2024)は基腐病菌の胞子懸濁液を苗に接種した後,苗をポットに移植し温室で3週間生育させることにより抵抗性を評価する手法を開発した.抵抗性品種を開発するためには,育種の初期世代に室内検定法で選抜し,後期世代において圃場検定を行うことで,効率の良い品種開発を進めることができると考える.
本研究において,47品種の抵抗性を明らかにしたが,抵抗性が“強”~“弱”まで,著しい偏りもなく存在していた.これらのことから,基腐病抵抗性は単一の抵抗性遺伝子により制御されるのではなく,複数の遺伝子が関与していることが示唆される.また,抵抗性が“強”の「タマアカネ」,「オキコガネ」,「ベニハヤト」などの系譜情報からは,抵抗性の由来として推定できるような共通する品種・系統は見いだせなかった.しかし一方で,抵抗性が“やや強”の「こないしん」の系譜上には抵抗性“強”の「タマアカネ」,抵抗性が“やや強”の「すずほっくり」の片親は抵抗性“やや強”の「べにまさり」であることから,「タマアカネ」,「ジョイホワイト」,「オキコガネ」,「ベニハヤト」など,抵抗性が強い品種を交配母本とすることは,抵抗性品種を育成するために有効であると考えられる.
2019年に育成されたでん粉原料用の「こないしん」(小林ら 2024)は基腐病に強かったことから,2022年には1,631 ha(農水省 2024)まで普及が進み,南九州における基腐病の被害軽減に貢献している.今回明らかになった品種の抵抗性の情報が,生産現場での品種選定の一助になること,さらに抵抗性品種育成に寄与することを期待する.
本研究を行うにあたり,農研機構九州沖縄技術支援センター九州第3業務科職員,研究補助スタッフの権掘理惠子氏,徳留久美子氏,松﨑あづさ氏に協力をいただいた.なお,本研究はイノベーション創出強化研究推進事業(JPJ007097)「産地崩壊の危機を回避するためのかんしょ病害防除技術の開発(01020C)」の支援を受けて行った.