抄録
自殖性作物における,あたらしい突然変異育種法として累代照射による突然変異誘発をとりあげた。これは毎代照射をくりかえすので,いつも翌代に新しいX2系統の栽培が可能であり選抜の対象とすることができる。毎代種子に放射線照射をくりかえすことによって,照射集団内の遺伝的構成がどのように変化するかを数学的'にとりあつかった。翌代に突然変異体を分離する系統の割合は6代照射以後ほぼ一定値をとる。また,突然変異体がほかの遺伝子型(原型やヘテロ個体)とおなじ・繁殖率をもつと仮定すると,突然変異系統の割合は世代をかさねるとともに増加してゆく。そのために照射集団は突然変異集団に転化して選抜が容易とたることが予想された。イネ種子にγ線照射を毎代等線量でおこない,1.回照射と累代照射とのあいだで不稔や突然変異について比較、Lた。照射回数をまLても不稔に関して放射線感受性の変化がみとめられないこと,および累代照射をおこたう'ことによって不稔のちく積がおこることはないことが観察された。毎代,10,OOOrをあたえていったときには照射回数とともに突然変異もましていったが,30,000rの照射をつづけたときには突然変異がまさなかった。そのため,累代照射においては高線量照射はのぞましくないと結論された。また,累代照射によって突然変異スペクトルの幅がひろくたり,まれな突然変異型がみいだされ.るようにたった。さらに,イネとオオムギとをもちいてX線照射を3代くりかえし,照射集団ではベテ阿個体が保持されていることをたしかめた・また,照射集団において3回目の照射によって生じた突然変異頻度は1回照射のときの突然.変異頻度とほぽひとしかった。このようにして,累代照射によってたかい突然変異類.度がえられるのは,集団内における突然変異体の増加を別とすれば,主として照射集団内にヘテロ個体が保有されていることにもとずいていると考えられた。