抄録
白菜の選択受精を遺伝学的な面から明らかにするため,花心白菜と松島新2号白菜について,自確と交雑実験を組合せて自家および交雑不和合性の遺伝学的研究を行なった。その結果,両品種とも不和合性について複雑な分離を示し(Fig.1,2:Table 1,2),従来の諸仮説では満足に説明できなかった。このため,一連のsporophytic controlをうける離反因子Sのほかに,1対のF-f因子を設け,次のような仮説をたてて本実験結果の説明を試みた。(1)S遺伝子はF遺伝子と平衡を保って初めて各S本来の機能を表現する。優性のFは累積効果をもつため,Sの種類によってはSホモの場合にFがホモになると,雌ずいでそのSの機能が低下するものがある。また,Sへテロの場合にFがホモになると,雌ずいでのSの優劣関係が逆転する組合せがある。(2)劣性のfをもつ花粉は受精にあずからない。(3)花心白菜にS1~S4,松島新2号白菜にS5~S8の複対立遺伝子をあたえ,これらの'問にTable 3の優劣関係およびFig.3の交雑和合関係がある。以上の仮説から両品種の各遺伝子型,その自殖次代の遺伝子型とその不和合性,および不和合:和合型の理論分離比がそれぞれえられる(Table 4,5)。この遺伝子型を自殖実験結果(Fig.1,2)および交雑実験結果(Table 1,2)にあてはめれぼ,それぞれFig.4,5およびTable 6,7となり,複雑な実験結果がすべて説明できた。