育種学雑誌
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イネの胚予発生とX線の効果 : I.M1致死および双子誘発から見た発生の特異段階
大曽根 兼一大野 清春
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1970 年 20 巻 3 号 p. 151-159

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抄録
イネの胚子発生の過程を放射線に対する反応の差異に基づいて追求することを目的とした。水稲品種「全南風」を用い、バイオトロン(30℃、自然光)条件下で発育させた開花後1~11日の幼胚に3および6KRのX線を照射した。M1生存率は開花後2目胚の照射でピークに達した後減少し、5日胚での照射を境として再び上昇した。また、1~5日胚の照射から得られたM1幼植物中に、2日胚の照射をピークとして多数の双子が観察された。双子の形態は幼胚の照射時期によって異なり、1~2日胚照射では完全な双子が得られたが、3日胚照射では鞘葉が、4日胚照射では第1葉までが、5日胚照射では第3葉までがそれぞれ単葉のまま共有されている双子が得られた。2~3日胚照射に限って2つの種子根を持つ胚が見られた。以上の諸結果から、(1)2日胚は未分化な多数の細胞から成るため双子が誘発され易く、また照射による障害の回復が容易なためM1生存率が上昇すること、(2)5日胚になると生長点形成に関与する細胞の分化が完了するため双子は誘発されにくくなり、またM1生存率も低下すること、(3)6日胚以後はそれらの分化した細胞数が増加するため障害の回復が再び容易となり、M1生存率は上昇すること、(4)鞘葉、第1、第2、第3葉、種子根の形成に関与する細胞の分化はそれぞれ3日胚、4日胚、5日胚、5日胚、4日胚に完了し、それらの時期以後の照射によって生ずる双子にはそれらの葉または種子根は単葉または単根としてしか現れないことなどが考察された。
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