育種学雑誌
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ナタネの異数体の次代にあらわれた双生子植物の起源に関する細胞遺伝学的研究
徳増 智
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1972 年 22 巻 6 号 p. 334-339

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抄録
ナタネBrassica napus var. oleiferaの低四倍体(2n=72)と三倍体(2n=57)との交配より生じた異数体(2n=67)の次代より6対の双生子植物を得た。その出現率は9.1%であった。双生子を生じた種子と正常の種子との間には形態的にも、また大きさの点においても差異を認めなかった。双生子植物の半数は子葉数の異常を示したが、その後の生育には各対を構成している植物体間に著しい差異は見られなかった。一方、開花始期・草丈・花粉稔性・種子稔性についての調査では、双生子対によって若干の差異を示すものと、何らの差異をも示さないものとがあった。特にNo. 44は両植物とも特異な形態を示し、両者はきわめて類似していた。6対の双生子の体細胞染色体数はMIIにおける両娘核板上の染色体数の観察から、65-60、63-63、67-68、65-65、65-60、および40-40と決定された。MIの観察は40染色体数を持つ一対(N0. 44)のほかには行なわなかった。N0. 44では、一個体が5III+12II+1Iおよび6III+11IIの対合型を示し、他の一個体は5III+12II+1Iを示した。本実験で得られた双生子の出現頻度は他作物のそれにくらべきわめて高く、また子葉数の異常を伴うことも特徴的である。この高出現頻度が遺伝的なものかどうか明確にし得ないが、その後代に再び双生子の出現が見られず、非遺伝的である可能性が強い。双生子の起源について細胞学的ならびに形態学的観点から考察すると、60ないし68染色体数を有する双生子対の大部分の個体は2個の別々の生殖細胞(卵細胞あるいは助細胞)が、それぞれ雄核と結合して生じたものと思われる。その際2個の生殖細胞は同一の胚嚢のものか別々の胚嚢のものかは不明である。No. 32は、その構成個体が共に同一染色体数(2n=65)を有し、形質も差異がなく恐らく一つの接合体から分離して生じた一卵性双生子であろう。No. 44はその染色体数(2n=40)から減数卵が単為生殖的に発達したと推定され、またその構成個体の形態的、細胞学的類似性から一卵性双生子と考えられる。
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