抄録
2条オオムギの3品種、「スワンハルス」、「関東ゴールデンメロン」、「薬系33号」の種子を25℃、暗黒条件下で発芽した。種子浸漬後、2時間毎に種子から胚を切り取り、固定、フォイルゲン染色して、押しつぶし法によって顕微鏡観察をした。胚の細胞分裂は、種子浸漬後16-18時間にはじまり、その頻度は22時間目に9~10%に達した。細胞分裂期(M)を2時間と仮定すると、前期、中期、後期、終期の時間は各点約50、15、5、50分と推定される。発芽種子の胚における茎葉部各器官の第1回細胞分裂は、第1葉、第2葉では、16~18時間目、また第3葉や第4葉と茎端分裂組織では、18~22時間目に開始された。「スワンハルス」品種を用いて、浸漬開始後のいろいろな時期にとり出し、その第1葉に3H-thymidine処理をおこなって、第1回目のDNA合成を調べた。細胞分裂の開始以前の、種子浸漬後12~14時間にDNA合成は始まった。このことから、休眠種子における第1葉分裂組織の全細胞はG1期にあり、種子の浸漬とともに同調的にDNA合成期(S期)へ入ることが判った。また、S期とG2期の経過時間は約4時間であると推定された。「スワンハルス」種子の浸漬後、5-21時間目まで1時間毎に第1葉を切り取り、3H-uridineのとりこみをおこなって、RNA合成を調べた。第1葉分裂組織細胞では、種子浸漬後5~6時間と15~16時間とに標識細胞の頻度が高まった。後者から、RNA合成がS期に行なわれることは明らかである。種子浸漬後5~6時間目の第1葉分裂組織細胞では、染色糸が繊維状に分布しており、その上に銀粒子が観察された。また、15~16時間目に3H-leucineのとりこみ処理をおこなった結果、ついでおこる分裂期の中期細胞の染色体上に銀粒子が観察された。浸漬後15~16時間のS期に或種の染色体蛋白質が合成されていることがわかった。