育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
高蛋白米品種の育種に関する基礎的研究 : I. 玄米蛋白含有率の品種問差異および諸形質とくに収量との関係について
東 正昭櫛淵 欽也伊藤 隆二
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 24 巻 2 号 p. 88-96

詳細
抄録
1)米の蛋白含有率に関して我国の栽培品種の間にも品種間差異が存在し,フクニシキ,ホウネンワセなどが高く金南風などは低い。2)窒素多肥によって蛋白含有率は増加し,その増加程度は品種により若干の差はあるが,実用的な施肥量の範囲内では品種順位に欠きた逆転はないものと考えられる。3)玄米を精白することにより蛋白含有率は低下するが,玄米と白米の蛋白含有率の間には高い正の相関が認められた。4)玄米蛋白含有率と出穂期の間には本実験の範囲内では有意な相関は認められたかった。5)玄米蛋白含有率と品質の間には品種の面からは特別な関係は認められなかった。また蛋白含有率と千粒重の間には負の相関がみられたが,フクニシキのように大粒で高蛋白の品種も存在する。6)玄米蛋白含有率と収量の間には負の相関々係が認められた。その原因としては収量に直接影響を及ぼすような草状変異に伴ない二次的に高蛋白になるものがあるためと考えられる。しかし,フクニシキ,ホウネソワセは高蛋白で収量も低くない。7)蛋白含有率の高い品種の高蛋白性が,遺伝的能力によるものか,草状変異に伴なう二次的現象にすぎないかについて検討した結果,フクニシキがフジミノリに比べ高蛋白であるのは穂への蛋白集積能力が遺伝的に高いためと推察された。他方,高蛋白突然変異系統No.217が高蛋白であるのはsinkサイズが著しく小さく低収であるため,すたわち草状変異に伴なう二次的変異による可能性が強いと考えられる。
著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top