育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
小カブの早熟性に関するヘテロシスと組合せ能力
有倉 保雄武居 俊雄
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 30 巻 1 号 p. 65-72

詳細
抄録
小カブの早熟性に関するヘテロシスの効果を検討する目的で,一般組合せ能力(GCA)と特定組合せ能力(SCA)の相対的た重要性および総合的たヘテロシス効果(hij)を研究した。栽培品種の中から選んだ7品種の自殖系統を用いて,相反を含むすべての組合せによるダイアレル交雑法により組合せ能力の分析を行った。試験区は2回反復の乱塊法とした。早熟性を,金町早生小カブの収穫適期とされている播種後50日目における生育量で表すと,中・大カブの生育速度は遅かったが,また同類品種でも自殖系統問でかたりの差が見られた。対象とした4形質(根の太さ,根の縦の長さ,葉長,直根の太さ)の測定値のいずれにあっても,F1の50日目における生長量は両親の平均値に対して,1%水準で大きく,また,高い値の親に対して根の太さにおいては1%,根の縦の長さにおいては5%水準で,ともに有意に高い値を示し,早熟性に対するヘテロシスの効果の大きいことがわかった。組合せ能力の分散は,5%水準で有意であった根の太さのSCA以外は,すべて1%水準で有意であった。SCAの分散に対しGCAの分散は根の太さと葉長で6~8倍,根の縦の長さで約2倍であり,直根の太さにあってはほぼ等しかった。根の太さのGCAの値は金町早生M-7-6で極めて高く,また,相反の差に関しては,根の太さでは一般相反効果(GRE)に有意差が見られ,他の3形質では特定相反効果(SRE)にのみ有意差が見られた。また,総合的たヘテロシス(hij)は根の太さで金町早生M7-6×天王寺38-14,石下金町R13-2×寄居18-8,金町早生M17-6×聖護院42-17たどで欠きた値が得られた。根の太さと他の3形質との関係で注目されたものは,直根の太さとの間に見られた負の相関であった。以上より,小カブの早熟性に関して金町早生M=7-6に極めて高いGCAが考えられるが,この品種を用いて更に高いGCAをもつ系統の育成と,hijの高い組合せを見出すことによって,小カブの早熟性を更に高め得ることが明らかにたった。
著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top