育種学雑誌
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サクラソウ倍数体品種の花粉形質と倍数性進化
山口 聰
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1980 年 30 巻 4 号 p. 293-300

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抄録
サクラソウ園芸品種のうち,2倍体,3倍体,4倍体,あわせて53品種の花粉形質を調査し,巨大花粉が1%以上認められ,花粉稔性が85%以下の品種が倍数体である可能性を示唆した。倍数体品種に共通して観察されたばかりでなく,一部の2倍体品種にも偶発的に観察された巨大花粉は,四分子期以降に,普通の大きさの小胞体2個と相接しているところをしばしば観察されるうえ,内容が充実していて,発芽カもあるところから,受精に関与し得る,2倍性の配偶子(非還元性)と見なせる。この巨大花粉が2倍体レベルでも,偶発的に生じ,しかも稔性が高いので,サクラソウ園芸品種群内に,配偶子倍加による倍数性進化が起きたものと考えられ乱花径の巨大性,花梗の長大性,なと伝統的に,サクラソウの優良品種に,一般的に要求される諸特性の大半は,倍数体の表現型にも共通していることから,300年に渡るサクララソウの栽培の歴史において,これら諸特性を対象に選抜が加えられた間に,無意識のうちに倍数体品種が育成,保存されたものと考えられる。
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