育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
イネのパキテン染色体地図上の動原体と転座点稲の交雑に関する研究.第LXXI報
佐藤 茂俊木下 俊郎高橋 萬右衛門
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 30 巻 4 号 p. 387-398

詳細
抄録

イネの染色体地図を充実させるには,動原体の位置や標識遺伝子の染色体腕上分布を明らかにする必要がある。本研究では減数分裂の太糸期染色体を用いて,動原体と転座点の位置関係を決定することを試みた。(4)転座ヘテロ型の4連染色体環では,動原体の探索や染色体部分を決めることが困難であった。そこで同一の染色体がそれぞれの転座内に含まれる二種の相互転座ホモ系統を用いて交配を行い,F1の太糸期において生ずる複十字型または並立型を含む6連染色体の接合像を観察し,両親に関する2種類の(4)転座ヘテロ型と対比させて,転座点の種類や染色体部分の所属を明らかにした。また動原体の位置については,それをもっている染色体部分の推定が可能なことから,比較的容易に動原体部分と染色体の腕比を決定できた。このようた分析法によって,現在までに6種類の染色体(第1,2,3,9,10,11)について,23個の転座点と動原体の位置関係を示す細胞学的地図(Fig.5)が試作され,その中に既知の転座利用連鎖分析の成績によって,9種類の標識遺伝子座位を含めた。転座染色体に関する染色体番号は,西村(1961)の命名法によったが,これはこれまで核型に付けられてきた染色体の長さの順による番号とは異なるので,将来研究者間での混同をさけるために,核型を重んじて染色体番号を統一し,転座やトリソーミーの染色体番号やそれらと対応する連鎖群番号にも用いることが望ましい。

著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top