育種学雑誌
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ハナショウブ(Iris ensata Thunb.)における胚の生長と培養条件について
藪谷 勤山縣 弘忠
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1981 年 31 巻 4 号 p. 377-382

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抄録
アヤメ属(Iris)では,高い交雑不和合性のため種問交雑が概して極めて困難であり,胚培養の導入が望まれているが,本属植物の胚培養に関する知見はまだほとんどない。本報は,アヤメ属の胚培養に関する基礎的知見を得るために,ハナショウブ(I.ensata Thunb.var.ensata,2n=24)の一品種五月晴を用いて,胚の生長に及ぼす種々の培養条件の効果を調べたものである。ハナショウブの自家受粉後約60日目の種子より胚を取り出してこれを連続照明,約20℃の室内で60日間種々の培養条件下(Tab1e 1)で培養L,発芽率,乾物重,草丈および根長について調査した。その結果,ハナショウブ胚の発芽並びに生長にはpH4~5,蕉糖2%および寒天0.4~0.6%に調整したNitschの無機培地が最も良好であった。また,30ppmのペプトン添加は胚の生長に,また5ppmのジベレリン添加は胚の発芽にそれぞれ著しい効果を示した。しかし,これらの添加物がハナツヨウブの胚培養にとって不可欠のものとは認められなかった。
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