育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
自殖性作物の量的形質の育種における戻交配と選抜のバランスに関するシミュレーション研究
池橋 宏
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 32 巻 1 号 p. 71-78

詳細
抄録
遠縁品種から1~2個の主働遺伝子を戻交配によって,既存品種に導入することはすでに確立されている。より一般的にみると,戻交配は,望ましい形質群を,選抜せずに導入することであり,選抜は望ましい遺伝子を集積するか,あるいは不良遺伝子を除く手段である。この両者を総合した育種法が考えられてよい。 例えば,陸稲の圃場抵抗性を導入するには,いもち病について選抜しながら,水稲を戻交配することが考えられる。特定の食味をもつ品種を戻交配しながら,耐病性や強稈性について選抜することも考えられる。 これらを一般的な形に整理してみると,aaBBをAAbbに戻交配し,Bを導入すると共に,Aについて選抜を反復し,AABB型を得ることである。 このような遺伝子対が多く,またA-bに連鎖があると,実際にすべての遺伝子についてAABBを得るのは容易でないと予想される。ここでは,主として戻交配の回数とそれに応じた選抜の強度に関して,いくつかの異なる育種方式を想定し,それらの予想される効果について,シミュレーションによる評価を試みた。 シミュレーションにおいては,8組の,独立に遺伝する相同染色体のそれぞれに,一方の親では,Aiとbi(i=1~8)が,他方の親では,aiとBiが,一組ずつ位置するものとした。またこれらのすべてのAiとbiあるいはaiとBiについて,同じ組換価での相反連鎖があるものとした。遺伝値として,AAおよびBBに2,AaおよびBbに1,aaおよびbbに0を与えて,Aiとaiは形質Aを支配し,Biとbiは形質Bを支配する想定した。これによって一方の親の形質の値は(16,0)となり,他の親は(0,16)となり,育種の目標は(16,16)である。このため形質Aこついては選抜により,形質Bについては戻交配によって向上を計るものと考える。
著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top