育種学雑誌
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組織培養法によるカラタチ珠心肝実生からの不定芽の誘起とその増殖
マツモト カズミツ山口 彦之
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1983 年 33 巻 2 号 p. 123-129

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抄録
カラタチ(Poncirus trifoliata)種子を用いて,不定芽を直接誘起するための培地の条件を検討した。実験は,(1)不定芽または球状胚の誘起,(2)その増殖,(3)不定根形成,の3段階に分けて行なった。 カラタチ種子は滅菌後,種皮を剥いだ後置床した。培地は,CHATURVEDI and MITRA(1974)の基本培地に種々の濃度の植物ホルモンを組み合わせて用いた。置床した種子は3から4日で発芽し,5.0mg/l以上のBAを含む培地で10日後には不定芽または球状胚様体の形成がみられた。なかでも最もよく形成をみたのは,1.0mg/l NAA+5.0mg/l BAの培地と2.0mg/l NAA+10.0mg/l BAの培地であった。 この結果をふまえ,次に1.0mg/l NAA+5・0mg/l BAを含む培地でまず不定芽または球状胚様体を誘起させた後,それを切りとり,新しい培地に移植することによってその増殖を調べた。その結果,不定芽または球状胚様体の増殖は,NAAによって余り影響されず,2.5または5.0mg/l BAでよく形成されることがわかった。 次に不定根の形成を調べた。実験材料としては発芽初期の子葉をとり除いた茎頂端を含む2~3mmmの茎を供した。その結果,不定根の形成はBAを加えない培地でのみ得られた。なかでも2.0mg/l NAAにおいて発根,伸長ともに良かった。4.0mg/l NAAでは発根とともにカルスの形成がみられた。 以上のことから,カラタチでは,不定芽または球状胚様体が容易に誘起でき,それを利用した増殖系が確立できることがわかった。
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