育種学雑誌
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醸造用大麦育種におけるアルファアミラーゼ活性に関する品質検定
関口 忠男武田 元吉川口 数美
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1984 年 34 巻 3 号 p. 263-272

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抄録

麦芽のAA(アルファアミラーゼ活性)に関する醸造用大麦育種における品質険定上の問題点のうち,2つの側面について,11から36の品種及び有望系統を供試材料として用いて,検討を行った。 はじめに,実際の育種過程において多数・少量の試料の迅速な分析を可能にするため,AA測定のための新しい簡便な分析方法を検討した。この方法はBANASIKの方法(BANASIK 1971)を改良して考案したものであり,改良点は試料液中のべ一夕アミラーゼの不活性化処理を自動化したこと,及びべ一夕アミラーゼの加熱不活生化後の試料液の遠心分離処理を省略したことであった。その結果,分析の操作を全てオートアナライザーによって自動化することができた。この簡便法から得られたデータは標準のASBC法から得られたものと高い相関があった。 次に,環境条件の影響によるAAの変動性及びAAと他の麦芽形質との相関関係を検討し,品質検定上の問題点について考察した。作物の栽培環境条件として収穫年次及び栽培場所について検討し,麦芽製造条件として製表タイプ(製表のための試料の量)について検討した。統計分析の結果から,AAに関する品質検定は遺伝的な選抜に役立つが,AAはDP(ジアスターゼ力)よりも環境条件によって変動しやすいので,DPにくらべて幾分選抜が難しいことが推定された。さらに,36品種のAAと他の10の麦芽諸形質との関係を検討した結果,AAは可溶性窒素含量(SN),コールバッハ数(KI)、麦芽収量率(MY)及び麦汁色度(WC)と高い正または負の相関を示した。また,AAとDPの関係から,AAの検定をDPの検定とは別個に行う必要があると考えられた。

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