抄録
ツロクローバ(Trifolium repens L.)は最も重要たマメ科牧草の一つであり,蛋白やミネラル含量が高く良質飼料として,さらにイネ科草種と混在し,共生する根粒菌の窒素固定による施肥量の節約のため,世界各地で広く利用されている.しかし,モザイク病に感染しやすく,これが収量や永続性を低下させる要因の一つとなっている.一方,クラクローバ(T.ambiguum M. BIEB.)はシロクローバに感染するアルファルファモザイクウイルスだとの数種のモザイク病に低抗性を示すことが血清学的手法により明らかにされている.しかしながら両者には交雑不和合性が存在し,通常の交雑によって雑種を得ることができない.ただしT.ambiguumを母親にして交雑すると子房は発育し,胚珠が受精後5日目ごろの初期球状胚まで発育するが,その後胚乳の崩壊に引き続き,胚が崩壊してしまうことが観察された、極めて初期に胚が崩壊するために胚培養は困難なので,胚珠培養を用いることにより,雑種の作出を図った. Trifolium ambiguum(2n=6X=48)とT.repens(2n=32)との交雑胚珠を受精後5日目に取り出して寒天培地に置床した・培地組成は基本培地[一部修正したNITSCH(1951)の主要無機塩類成分+MURASHIGE and SKO0G(1962)の微量無機塩類成分とビタミン類コに7%ショ糖,O.2%カザミノ酸,0.8%寒天を加え,さらにキュウリの若い果実もしくはシロクローバ未成熟種子のジュース(10%)を添加したものを用いた.この培地で28℃終日照明下で15~20日間培養した後,基本培地に1%ショ糖を加えた培地に継代させた.その結果,いくつかの胚珠が発芽し幼植物が得られた・そのうち4個体を土壌に移植して生育させ,1個体は開花を見るまで生長した(Fig1).