育種学雑誌
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トウガラシ(Capsicum annuum L.)子葉培養組織の不定芽形成能
SRIPICHITT Prapa縄田 栄治重永 昌二
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1987 年 37 巻 2 号 p. 133-142

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抄録
トウガラシ品種“八房"を用いて,子葉培養組織の不定芽形成に及ぼす種々の要因について研究した。葉柄をつけた子葉を0.01~1.00mg/lのインドール酢酸(IAA)またはナフタレン酢酸(NAA)添加MS培地で培養すると,どの濃度でも培養1~2週間以内にカルスと根の移成が見られた.カルスは葉柄の切断面に,また根は葉柄の切断周辺部,葉柄周囲及び子葉の中肋部に形成された,IAAは比較的細長く,分枝の少ない根を誘導するのに対し,NAAは比較的太短く,分枝の多い根を誘導した.またオーキシン濃度が0.01mg/lから1.00mg/lへと高くなるに従って根の発生は多くなった(Table1).これらの培地では不定芽の形成は見られなかった.子葉培養組織を1~7mg/lのベンジルアデニン(BA)またはカイネチン(K)添加MS培地で培養すると,どの濃度でも培養1週間以内で葉柄の切断面にカルス形成が見られ,培養2週間後には葉柄の切断周辺部に多数の不定芽原基が形成され,3週間後には不定芽が肉眼で認められる迄に発達した.継代培養後2週間で不定芽が伸長し,培養組織当たりの不定芽数が数えられるようになった.このとき培地にBAを3~7mg/l添加した培地で培養した組織の不定芽形成頻度が最も高かった(Table2).KはBAよりも不定芽誘導効果が低かった.MS培地にBA 3mg/lとオーキシン0.01~1.00mg/lを組み合わせた培地を作り不定芽誘導を調査した.これらの培地では不定芽の形成やその伸長を抑制する傾向が見られたが,カルスと根の形成が観察された.不定芽抑制効果はNAAの方がIAAよりも大きかった(Table3).播種後12日目の苗から採取Lた子葉培養組織において不定芽形成頻度が最も高く,それよりも日数の多い苗から採取した子葉培養組織は不定芽形成頻度が低下した(Table4).子葉の一部を勇除した葉柄づきの培養組織及び葉柄づきの完全子葉は,子葉のみまたは葉柄のみからなる培養組織に比して,高頻度に不定芽を形成した(Table5).またバーミキュライトにMS培養液の1/2濃度の液を加えた培地で発芽生長さ昔た苗から採取した子葉培養組織の不定芽形成頻度が最も高く,その頻度はMS培養液,KNOP培養液,純水の順に低下した(Table6).上述の諸条件を最適にした場合の子葉培養組織の不定芽形成頻度は90~100%,また培養組織当たりの不定芽数は8.6~11.9であった.これら培養組織をMS培地にBA3~5mg/lとIAAまたはNAA0.5mg/lを添加した培地に移したとき,根の形成カミ見られ,7週間以内に完全個体が得られた.
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