育種学雑誌
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イネ巨大胚突然変異系統の含油量と脂肪酸組成
松尾 巧佐藤 光尹 景民大村 武
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1987 年 37 巻 2 号 p. 185-191

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抄録

油飼料イネ育種のための基礎研究として巨大胚突然変異系統(EM-40)と正常型(全南風)において,胚,糊粉層および澱粉層の含油量と脂肪酸組成を比較検討した. 玄米千粒重について巨大胚突然変異系統は20.18gと正常型の22.28gより軽かった.しかし,胚は長さ,幅が大きく,胚重が2.6倍に達した.一方糊粉層はやや厚くなったにもかかわらず,糊粉層重はほぼ同じであった. 正常型では,含油量0,589のうち,胚と糊粉層いわゆる糠で74劣,巨大胚突然変異系統では含油量O.79gのうち糠が83%を占めていた.巨大胚突然変異系統の玄米の含油量が,正常型に比べ,1.36倍に増加したことは,巨大胚の胚中の含油量が正常型の胚の1.94倍,糊粉層で1.30倍に増加Lたことに起因していた.玄米における含曲率は,正常型が2.60%で,巨大胚では3,91%と高くなっていた.しかし,正常型の胚の含油率の29.09%に比較して巨大胚突然変異系統は21・09%に減少Lていた・これは胚の巨大化により,胚中の滴の充実が低下したためと考えられる.一方糊粉層の含油率は正常型の1.36倍に増加していた.澱粉層の含曲率は,正常型,巨大胚突然変異系統ともほとんど変らず1%以下であった. 正常型の脂肪酸組成は,胚,糊粉層および澱粉層ともほとんど変らなかったが,巨大胚突然変異系統では,胚の巨大化に伴ってステアリン酸がやや増加していた.

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