育種学雑誌
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ノザワナ(Brassica campestris)とキカラシナ(B.juncea)の受粉・結実に果たす花粉媒介昆虫の役割
大沢 良生井 兵治
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1987 年 37 巻 4 号 p. 453-463

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抄録

自家不和合性であるノザワナ(Brassica campestris cv. Nozawana)と自家和合性とされているキカラシナ(B.juncea cv. Kikarashina)を用いて,結実に対する花粉媒介昆虫の役割を調べた.1網室12個体からなる網室採種において花粉媒介昆虫(シマハナアブ,Eristalis cetealis)の放飛頭数を植物1個体あたり0から4頭まで5水準とし,放飛頭数と1花あたり受粉花粉粒数の関係ならびに,受粉花粉粒数と結実率との関係を調査した・その結果,ノザワナでは花粉媒介昆虫がいない場合の自家(自花)受粉花粉粒数が平均胎座数の約5倍にあたる138粒であっても結実率は0%であったのに対し,キカラシナでは胎座数の約5-5倍にあたる118粒の自家(自花)受粉花粉粒数が認められ,結実率は56%であった.しかし,両品種とも放飛頭数が増えると受粉花粉粒数が増え,4頭区では胎座数の約20倍にあたる400~500粒が受粉され,結実率はノサワナでは75%,キカラシナでは90%と向上することがわかった.また,放飛頭数を植物1個体あたり6頭にすれば,両品種ともに100%近い結実率が得られるものと推測された.自家不和合1生のノザワナで花粉媒介昆虫の訪花によって結実率が向上したのは,自家花粉とともに混合受粉される他家花粉の量的効果の他に自家花粉と他家花粉が混合受粉されることによる質的効果も関与しているためであると推定された.自家和合性のキカラシナで花粉媒介昆虫の放飛によって結実率が向上したのは,自家花粉が増加したことによる量的効果のみならず,他家花粉が混合受粉したことによる質的効果も関与していると推定される.以上のことから,アブラナ科作物では自家不和合性の種はもちろん,自家和合性の種でも結実に際して花粉媒介昆虫が重要な役割を果たしている場合が多いといえる。

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