育種学雑誌
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イネ品種IR50の縞葉枯病ウイルス抵抗性とヒメトビウンカ抵抗性
根本 博石川 浩一志村 英二
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1994 年 44 巻 1 号 p. 13-18

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抄録
虫媒伝染性のウイルス病に対する作物の抵抗性には媒介虫抵抗性とウイルス抵抗性とが関与する.本研究ではイネ縞葉枯病(RSV)の抵抗性発現に関与する要因とその遺伝様式を検討した.その結果,供試した抵抗性品種には主にウイルス感染抵抗性が関与することが明らかになった.また供試4品種の幼苗期の感染抵抗性は2水準に分けられ,日本型水稲「むさしこがね」と陸稲「ミナミハタモチ」は高度の感染抵抗性,インド型品種IR50とTN1は中程度の感染抵抗性を有すること,また,IR50のRSV抵抗性には媒介虫であるヒメトビウンカ(SBPH)抵抗性も関与することが明らかになった.なお,供試4品種のRSV抵抗性機構は以下のようにまとめることができた.IR50:中程度ウイルス感染抵抗性十媒介虫抵抗性TN1:中程度ウイルス感染抵抗性むさしこがね:高度ウイルス感染抵抗性ミナミハタモチ:高度ウイルス感染抵抗性IR50と感受性品種レイメイとのF1,F3,F6世代を用いてSBPH抵抗性とRSV抵抗性の遺伝様式を調べたところ,明確な分離が認められず,これら2つの抵抗性はともに微動遺伝子支配であることが明らかになった.また,これら2つの抵抗性間の関係をみるために,F3系統をRSVに対する反応で抵抗性系統群(R群)亨中間十感受性系統群(M+S群)に,F6系統を抵抗性系統群(R群),申聞系統群(M群),感受性系統群(S群)に分け,系統群間でSBPH抵抗性を比較したところ,F3世代ではR群とM+S郡との間にSBPH抵抗性に関する差異が認められなかったが,F6世代では差異が認められ,R群がSBPH抵抗性であるのに対して,M群とS群は感受性であった.F6世代で得られた結果は従来RSV抵抗性に対して効果が弱いとされてきたSBPH抵抗性がRSV抵抗性にかなりの影響をおよぼすことを示している.これらの結果から,IR50のRSV抵抗性は中程度ウイルス感染抵抗性とヒメトビウンカ抵抗性の2つの抵抗性によるものであり,両抵抗性とも不完全優性を示す複数の微動遺伝子支配を受けていると結論される.
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