臨床化学
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酵素的加水分解法による血清Lecithinの定量
高橋 十郎
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1974 年 3 巻 2 号 p. 235-242

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抄録
血清リン脂質は, グリセロリン脂質とスフインゴリン脂質に大別され1), グリセロリン脂質のLecithinが70%, スフインゴリン脂質のスフインゴミエリンが20%を占める。現在臨床検査分野におけるリン脂質定量は, 両物質を区別せず, 一括してなされていることが多いが, 両者の生体における合成過程2), 及びその代謝は全く異にしていることなどの事実を考慮するなら, 両物質を一括して定量することに大きな疑問が生じるのは当然である。少なくとも, LecithinとSphingomyelinとの分離定量方法が一般化するならば, 代謝面よりみた病態と, 血清レベルの変動との間により密な関連性が得られ, 臨床的意義が高まるものと考えられる。
現在行なわれている血清リン脂質の分離定量法は, 薄層クロマトグラフィーにて分離し, このスポットを抽出比色するものである1)。これは手技の煩雑性, 精度の点から主として研究面において利用され, 一般化されていない。そこで著者らは, 次のような原理にもとづく定量法を考案し, 種々の基礎的な検討を加えた結果, 本法は簡易性, 特異性において優れ, かつ精度も十分であることが判明した。
血清Lecithinに, Phospholipase C (Cl. Welchii)〔以下PL-Cと略〕を作用させて, Diglyceride〔以下DGと略〕を生成せしめ, これと血清中に既存するTrigIyceride〔以下TGと略〕をLipoprotein lipase(Psedomonase fluorescens),(及びRhizopus属産生Lipase), 〔以下LPLと略〕によりGlycerolに加水分解し, 以下Eggsteinらの方法3) にもとつく酵素法によりPyruvateに転換し, ヒドラゾン呈色法によりTotal-Glycerol値を求める。一方血清中の既存TG由来のGlycerolを前報4) のLPL-ヒドラゾン法により求め両Glycerol値の差よりLecithin値を求める方法である。この方法による若干の基礎的検討を加え, 実用的分析法を確立した。
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© 日本臨床化学会
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