臨床化学
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新しいアガロースゲル電気泳動法による高脂血症の病態解析への応用
村岡 公恵清原 義史菊池 正幸多河 典子前田 温小林 吉晴
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2002 年 31 巻 4 号 p. 266-274

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抄録

今回検討を行った血清リポ蛋白の電気泳動法は, アガロースゲルを支持体とし, コレステロール (CHO) 分画とトリグリセライド (TG) 分画の電気泳動パターンを重ね合わせ, コンピュータにより各脂質分画を詳細に解析できる方法である。対象患者は初診時に生化学検査の結果, 総コレステロール (T-CHO), トリグリセライド (TG) のいずれかが基準値を超えている未治療の者とした。この中でWHOによる高脂血症分類のlla型, llb型およびIV型に相当する患者検体について本法による分析を行い, 低比重リポ蛋白質-コレステロール (LDL-C) のピーク位置を正常のLDL-Cピーク位置と比較検討した。その結果, llb型とIV型においてLDL-Cのピーク位置が正常位置から陽極側へ大きく変化していた。この異常LDLを表すLDL-Cピーク位置の易動度の変化を数値化して, LDL荷電変性度数として表し, lla型, llb型およびIV型高脂血症における各リポ蛋白分画 (高比重リポ蛋白質 (HDL), 超低比重リポ蛋白質 (VLDL) とLDL) 中のCHOおよびTG濃度との相関性を検討した。その結果, lla型高脂血症ではLDL荷電変性度数は全例において基準値範囲内であった。一方, llb型およびIV型高脂血症ではLDL荷電変性度数が高値を示すものが多く認められ, llb型ではLDL-TGと有意な相関が認められ(γ=0.495, p<0.01), IV型ではHDL-C, VLDL-C, VLDL-TGおよびLDL-TGとLDL荷電変性度数の間に有意な相関が認められた (HDL-C: r=-0.449, p<0.01; VLDL-C: r=0.753, p<0.001; VLDL-TG: r=0.655, p<0.001; LDL-TG: r=0.403, p<0.05)。以上の結果から, 本法は脂質代謝異常を知る上で有用な測定法であると考えられた。

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