臨床化学
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シトルリン血症の病因と病態
佐伯 武頼小林 圭子
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2007 年 36 巻 1 号 p. 40-48

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抄録

シトルリンは, アルギニン合成の中間体ならびに尿素合成中間体として生じる, 一般には非タンパク質性のアミノ酸である。シトルリン血症は, 主にargininosuccinate synthetase (ASS) の欠損およびアスパラギン酸・グルタミン酸ミトコンドリア膜輸送体 (AGC) の欠損によって生じる。後者の原因遺伝子SLC25A13産物をシトリンと名づけたことから, 現在シトリン欠損症と称される-疾患概念の樹立に至った。すなわち, シトリン欠損症は, 成人では成人発症II型シトルリン血症 (CTLN2) を, 新生児では胆汁うっ滞性肝炎 (NICCD) を引き起こす。NICCDにおいては, シトルリンの他, 多くの血漿アミノ酸の異常を来たすだけではなく, 遅延性黄疸, 低血糖ガラクトース血症, 低タンパク血症など多彩な症状が見られる。シトリンは肝型のAGCとして, ミトコンドリアから細胞質へのアスパラギン酸の輸送を行い, 尿素合成, タンパク合成, 核酸合成などに関与するのみならず, リンゴ酸アスパラギン酸シャトルの一員として, 細胞質NADH還元当量のミトコンドリアへの輸送にも関与するので, その欠損は多彩な症状を示すものと考えられる。現在判明している最も重要なことは, シトリン欠損症では, 糖質摂取・投与が症状の悪化をもたらす, という点で, 治療上特に注意を要する。

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