臨床化学
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〈特集〉胎児胎盤系の臨床化学 (II) 胎盤機能検査妊娠性蛋白SP1(β1-SP1-glycoprotein) およびSP3(α2AP-glycoprotein)と胎盤機能
杉山 陽一西山 幸男
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1979 年 8 巻 2 号 p. 174-183

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抄録
high risk pregnancyの妊婦管理をいかに行うかは我々産婦人科医にとって古来よりの重要課題であるが, それをうまく行えるか否かは胎児あるいは胎盤の機能状況をいかに早く, しかも正確に把握出来るかにかかっているといっても過言ではない。今日ある胎児胎盤機能検査法はその目的のために種々工夫されて考案されて来たものであるが, SP11-SP1-glycopro-tein)やSP32AP-glycoprotein)もその一つとしてごく最近登場して来た検査法である。
1971年Bohn1) は胎盤抽出液を家兎に免疫し, その抗血清を非妊婦血清で吸収した後妊婦血清と反応させると4本の別々の沈降線が生じることを発見し, その4本をHPL, SP1, SP2, SP3と分類した。SP1やSP3はこの時に発見されたものの一部であるが, これらはいずれも妊娠時血漿中に出現する蛋白という意味で妊娠性蛋白と名付けられている。
もともとこういった妊娠性蛋白に関する研究は1959年のSmithies2)のPZP (pregnancy zone protein=SP3) の発表に始まるが, 1971年のBohnらの発表の後はLin et al. 3) 4) 5) 6) がPAPP-AやPAPP-Bなる糖蛋白も妊娠特異蛋白であると発表しており, HCGも糖蛋白であるのでこれらを含めると現在では, 7種類前後が妊娠性蛋白に含まれているものと思われる。
ところで本稿でとりあげたSP1がなぜ胎盤機能検査上注目されているかという点については本文で詳しくふれるが,(1) 合成部位が胎盤絨毛のsyncitiotrophoblastにあるらしいこと,(2) 妊娠週数とともに濃度が増し分娩後はかなりすみやかに消失することなどが上げられる。
SP3については今なお合成部位も不明であり, 分娩後の消失も遅いために胎盤機能検査上はSP1に一歩ゆずるというのが我々の見解であるが, 古くからPZPとして有名な蛋白でもあり胎盤機能を示すという報告7) 8) もあるのでSP1と対比しつつ胎盤機能検査法としての有用性を検討して述べてみたい。
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