抄録
本研究は, これまでナノ~マイクロスケールのセメント硬化体の微細空隙構造を対象として開発したモデルを, マイクロ~ミリスケールの土粒子間の空隙構造へと拡張し, 個々の空隙中の物質平衡状態を熱力学モデルで統一して記述する多相物理化学モデルを構築するものである. セメント改良砂の水和発熱, 空隙内の相対湿度変化, セメント硬化体から地下水へのカルシウム溶出現象などに関する実験結果から, 提案する手法の妥当性を確認した. カルシウム溶出劣化についての解析検討から, 粗大な空隙を有するセメント改良砂は地下水の移流の影響を受けて劣化が促進しやすいこと, 周辺地盤の存在が劣化の進行を低減させることなどを示し, マルチスケール解析の重要性を確認した.