土木学会論文集
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底部に逆転水温層を有する部分循環貯水池の水質構成に関する研究
道奥 康治神田 徹伊藤 達平西川 孝晴石川 勝久東野 誠
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1997 年 1997 巻 572 号 p. 33-48

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抄録

対象とする貯水池は, 底層で物質濃度が高く, 水温勾配が逆転しており, また年間を通じて貧酸素水塊が安定に維持される部分循環貯水池である. この特徴的な水温・水質構造の形成要因と水域の富栄養化現象との関連性を明らかにするために, 多項目の水質指標を計測・分析した. 底層付近では鉛直下方に水温が増加し不安定な水温勾配を呈するにもかかわらず, 底層水塊が通年的に滞留している. 水質観測より, 貯水池底層から下層には逆転水温勾配の密度欠損量を補償するに十分な高濃度の溶解性物質・浮遊物質が含まれることが明らかになつた. 鉄・マンガンなど金属成分は底層が貧酸素化した他の水域でも観測されるように高濃度を呈するが, その重量百分率は比較的小さく, 底層水の密度構成に寄与する主成分はカルシウム, 強熱減量から推定される有機物質濃度, などであった. 貯水池水の水質分析に基づいて水質輸送過程を考察し, 水質構造の形成要因, 富栄養化と水質分布との関連性を実証的に明らかにした.

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