抄録
海洋環境下におけるコンクリート構造物の耐久性を考慮した合理的な設計方法を確立することを目的とし, 海洋環境においてコンクリートの10年間の暴露試験を行い, 塩化物イオンの浸透, 鉄筋腐食, コンクリートの品質変化に関する検討を行った. その結果, 以下のことが明らかになった. (1) 暴露試験によって得られた塩化物イオンの見かけの拡散係数および表面塩化物イオン量を用いることにより, 長期的な塩化物イオンの浸透予測が可能である. (2) 海洋環境下におけるコンクリート中への塩化物イオンの浸透量は, 飛沫帯で最も多く, 以下海中, 海上大気中の順に多く, 暴露後10年の範囲では, 鉄筋の腐食はこの順に速く進行していた. (3) 良好に処理された打継目やひび割れ幅が0.05~0.1mm程度のひび割れは, 暴露後10年の範囲では, 鉄筋の腐食の進行を著しく促進させるものではない.