抄録
ウルグアイ・ラウンドの結果, 日本政府は農業の段階的な自由貿易化に合意した. この合意は農業の産業構造を変化させ, 土地利用変化を引き起こすことが予想される. 従来の Alonso 型モデルでの農地の役割は宅地供給に限定されており, 都市に対する食料供給基地としての役割が捨象されてきた. 本稿では, 農家の生産・消費行動を明示的に考慮し, 工業財・農産物が圏外と貿易されるという前提の下に Alonso 型モデルを都市部と農村部からなる都市圏に拡張して定式化した. その結果, 自由貿易化の土地利用に与える影響を分析できる. たとえば、(i) 農業就業率の低下をもたらし, (ii) 農地の宅地転用を進める, (iii) 都市圏のGDPは増加・減少の何れも生じ得る, ことが示される.