1999 年 1999 巻 633 号 p. 181-192
ステンレスクラッド鋼は, 防食を目的として橋梁に使用できる. 本文では, まず, ステンレスクラッド鋼の製造過程で発生する板厚方向の残留応力を解析的に求め, 残留応力の解析的推定が可能であることを示す. さらに, 多層複合材料からなる板の複合非線形有限要素解析プログラムを開発して, 圧縮を受けるステンレスクラッド鋼板の座屈耐荷力を求め, 初期不整が圧縮耐荷力に及ぼす影響を明らかにする. 解析結果から, 圧延ステンレスクラッド鋼の圧縮耐荷力は, 初期たわみの方向, すなわちその形状がステンレス側に凸か凹かによって, 降伏強度の10%近い差が現れる場合があること, また, クラッド比が0.2以下であればクラッド比が耐荷力におよぼす影響は小さいことなどの知見を得た.