2003 年 2003 巻 733 号 p. 1-20
本論文は, 実測資料を用いた遅れ系のパラメータ同定法であるモーメント法を提案し, 北海道内の山地流域を対象として実測水文資料を用いた解析を行なった. 実測雨量と流出量から計算される等価周波数伝達関数には, 雨量, 流量に含まれる全ての誤差成分が集約される. この性質を利用することによって雨量と流量の対応関係の適合性を判断できることを示し, 採用するデータの取捨選択をした. 一方, 藤田らは, kinematic wave 式を基本モデルとして降雨量と流域からの流出量間の等価周波数伝達関数もまた2~3次の遅れ系で近似できることを明らかにしている. 実測資料より得た遅れ系のパラメータを評価するために, 斜面域, 河道域における到達時間を求め, 降雨量の影響を取り除いた2つの流域特性指標を示している.