抄録
本論文は, 供用中の構造物に作用すると考えられる酸性雨成分に着目し, これがセメント硬化体の物性変化に及ぼす影響について検討を行ったものである. 新潟県域における降雨中に含まれる成分の調査結果から, コンクリートに化学的な浸食作用を与える成分として硝酸ならびに硫酸を一定の割合で混合した溶液を暴露溶液とし, 溶液中にセメントペースト供試体を暴露して硬化体中の各種水和物量, 空隙量ならびに曲げ強度の経時変化を把握した. この結果, 各水和物量間の変化に関係性が見出され, 水和物量の減少にともなう空隙の増加や曲げ強度の低下傾向にも相関性があることが明らかとなった.