2006 年 62 巻 4 号 p. 722-735
地すべり・崩壊発生場所を広域から抽出するための地質・地形的考え方と手法について現状をとりまとめた.表層崩壊に対しては,現在の技術で個々の発生場所を特定することは,土層の構造と性質が空間的に多様であるがために困難である.むしろ,自治体程度の広がりの危険度を既往の崩壊実績で評価することが実際的であると考える.既往の崩壊地形は近年実用化された航空レーザースキャナによって検出可能である.体積10万m3を超えるような大規模な地すべり・崩壊については,降雨による場合も地震による場合も,あらかじめ前兆的な地形が認められることが多いので,それを鍵にして発生場を予測することができる.ただし,地震によって発生する降下火砕物の急激なすべりや崩壊は前兆的な山地斜面の変形を伴わないので,その物質自体の存否を把握することが重要である.