2012 年 68 巻 1 号 p. 13-27
豊かな都市環境形成に欠かせない街路樹は,樹木にとっては劣悪な環境で育成していることが多い.このため健全な状態で街路樹を維持するためには,科学的・体系的な街路樹診断を定期的に実施する必要があるが,診断の非効率性や街路樹の個体識別の難しさなどが起因し,現状ではほとんどの自治体で実現には至っていない.そこで本研究では,ドイツのVTA(Visual Tree Assessment)法に基づいて,RFID(ICタグ)とPDA(携帯個人端末)を用いて,街路樹診断支援システムRTDSSを開発した.実際の街路樹において樹木医に試用してもらい,現在の方法よりも効率的で効果があることを示した.次に,将来RTDSSによって街路樹データベースが各道路管理組織によって開発された場合,データベース間で街路樹名などの齟齬により検索ができなくなることを防ぐために,オントロジーを開発した.実証実験を行い,言葉が異なる同じ種類の樹木を異なるデータベース間で検索することができることを示した.