抄録
本研究は,既崩壊領域を現状型教師データ(目的変量)として「斜面崩壊危険箇所評価モデル」を構築する際に議論が不足している点を指摘した上で,「未崩壊領域を規範型教師データ」とする潜在危険斜面の広域推定支援策について提案したものである.地すべりや斜面崩壊の発達過程を反映する「地形判読要因」は,専門家の知見として知られており3),次の5ケースを「規範型教師データ」として取り入れた.1)凸状尾根地形,2)凸状台地状地形,3)凹状単丘状地形,4)凹状多丘状地形,5)凹状緩斜面地形.現状型とこれら規範型教師データをもとに作成される斜面崩壊危険箇所評価図の違いを表示した「差画像」を提案し,その解釈の内容を含めて「既崩壊地とは土地の性状を異」にする「潜在危険斜面」の広域推定支援に有用となることを示した.