抄録
症例は18歳女性. 平成10年, 蝶形紅斑, 蛋白尿, 白血球減少, 抗核抗体陽性より全身性エリテマトーデス (以下SLE, WHOIIb) と診断され, prednisolone (PSL) とmizoribine (MZ) にて治療開始し, 寛解状態にあった. 平成13年3月に同様の症状が出現し, 4月不安神経症様症状と頻尿も加わったため, 5月当科入院となった. 興奮状態・退行・見当識障害を認め, 頭部MRI (T2W1強調画像) で両基底核領域に高信号域を呈し, 髄液IgG indexは上昇ないもののIFN-αが著明高値であることより, CNSループスと診断. 更に, 無抑制性排尿障害, 臍部以下の表在感覚低下と両下肢筋力低下, 下肢腱反射亢進, 胸髄MRI上 (T2W1強調画像) 中~下部胸髄に高信号域が散在しており, ループス脊髄炎の合併を認めた. ステロイド剤増量にても症状改善なく, シクロホスファミドパルス療法 (IV-CY) 併用. 以後速やかに精神症状改善し, 12回投与終了時には, 排尿間隔の延長, 下肢筋力・感覚低下の改善, 頭部・胸髄MRI上高信号域の消失を認めた. ループス脊髄炎並びに中枢性神経因性膀胱は, SLEの神経障害の中でも各々非常に稀な症状であり, 既報ではステロイド抵抗性の経過が多い. 本症例はCNSループスによる精神症状のみならずループス脊髄炎による膀胱機能障害にIV-CYが奏功した数少ない症例であり, 治療法選択に貴重な示唆を与えると考えられた.