日本臨床免疫学会会誌
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総説
紫外線による免疫制御
小村 一浩
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2008 年 31 巻 3 号 p. 125-131

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抄録

  紫外線は免疫を制御する因子の一つである.紫外線照射により腫瘍免疫が抑制される事,SLEや皮膚筋炎などの自己免疫疾患が増悪する事,ヘルペスウイルスなどによる感染症が増悪する事などがよく知られている.さらに紫外線は,尋常性乾癬や尋常性白斑などの炎症性皮膚疾患の治療にも広く臨床応用されている.紫外線による免疫抑制機序は複雑で,未だ一定の見解を得られていない.リンパ組織を移入する事で,紫外線により生じた抗原特異的な免疫寛容が他のマウスに転嫁できるという所見より,抗原特異的な免疫抑制性の細胞が紫外線により誘導された可能性が考えられてきた.近年,CD4+CD25+T細胞を選択的に移入した系で免疫寛容が転嫁できた事よりCD4+CD25+T細胞が中心的な役割を果たすと考えられるようになってきた.さらに,免疫抑制性の細胞はIL-10を含めた種々のサイトカインなどを介して,細胞接着分子の発現を制御していると考えられる.細胞接着分子が炎症細胞の局所浸潤を精密に制御しているからである.また,SLEや皮膚筋炎患者では,高率に光線過敏を有することや,免疫抑制性細胞の機能異常があることなどから,紫外線による免疫抑制機構が破綻した結果発症する可能性が示唆された.このように,紫外線は腫瘍免疫のみならず,自己免疫疾患の発症/制御に関与すると考えられるため,紫外線免疫学は臨床免疫学の中でも重要な分野の一つであると考えられた.

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© 2008 日本臨床免疫学会
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