2008 年 31 巻 3 号 p. 141-151
Epstein-Barrウイルス(EBV)はヘルペスウイルス群に属し,感染後潜在化し,一生を終わる.免疫抑制剤などで再活性化し,生体に重篤な状態を起こす.EBV関連疾患群である難病の病態に再活性化を起こし関与している可能性がある.関節リウマチ(RA)滑膜炎でのEBVの関与について最初に述べ,根治的治療の可能性について考察する.新たな治療戦略のキーワードは我々が発見し,クローニングしたSAP (signaling lymphocytic-activation molecule associated protein)または,SH2D1A (Src homology 2 domain-containing protein)である.SAP (SH2D1A)はSrc homology 2 (SH2)を持つアダプター分子として免疫細胞で働き,EBVの感染防御,液性免疫に深く関与し,SLEの原因遺伝子としても注目されている.SAP遺伝子の異常はEBVの致死的な感染を起こすX-linked lymphoproliferative (XLP) syndrome (Duncan disease)の原因遺伝子としても報告された.この稿ではSAPの機能を簡単に述べ,新たなRAの根治的治療に向けての治療戦略を考察する.