日本臨床免疫学会会誌
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総説
膠原病のポリジーンネットワーク
能勢 眞人
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2010 年 33 巻 2 号 p. 43-47

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抄録
  膠原病の病態・病理像の多様性は,膠原病が独立した疾患の寄せ集めである為なのか否かは,Klempererによる膠原病の提唱以来未解決で重要な課題である.腎炎のみならず血管炎,関節炎,唾液腺炎などの一連の膠原病を同一個体に発症するMRL/lprマウスにおいては,突然変異遺伝子Faslprによる単一遺伝子疾患とされていたが,個々の病変の感受性遺伝子座をマッピングし,位置的候補遺伝子を解析して得た我々の結論から,膠原病の病像多様性はMatherが提唱した「ポリジーン系遺伝」の概念に従うものであった.即ち,ある閾値に規定された量的形質は単一の遺伝子(ポリジーン)のみでは発現しがたく,複数の遺伝子の組み合わせにより相補的にはじめて発現し,ポリジーンにおこる突然変異は,その作用が小さいため潜在的に変異を集団に伝え適応性の幅を広げる効果をもつ,というものである.従って,膠原病の病像の多様性は,膠原病が独立した疾患の寄せ集めであるためではなく,同義遺伝子として集団内に潜在的に分布するポリジーンの組み合わせにより必然的に生み出されるものと考えられた.膠原病のこのシステムを膠原病のポリジーンネットワークと呼ぶ.
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© 2010 日本臨床免疫学会
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