日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
慢性進行性の筋炎を合併した原発性シェーグレン症候群の一例
内田 貞輔中野 弘雅小俣 正美伊東 宏柴田 朋彦大岡 正道山田 秀裕尾崎 承一皆川 直毅路川 陽介小池 淳樹
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2010 年 33 巻 5 号 p. 277-282

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抄録

  64歳女性.20年前に原発性シェーグレン症候群と診断.3年前より上り坂の歩行困難を自覚し,神経内科にて精査するも診断には至らず経過観察となっていた.しかし,その後も徐々に筋力低下は進行し,しゃがみ立ちや階段昇降も困難となったため,平成21年5月に当院に精査入院となった.
  身体所見で大腿筋群,頚部屈筋の筋力低下を認め,血液検査にて赤沈亢進,筋原性酵素の軽度上昇,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性を認めた.MRIでT1像においては大腿筋群の広汎な萎縮,脂肪変性,STIR像においては大腿四頭筋に不均一な高輝度領域を認めた.同部位の筋生検で筋線維間に炎症細胞浸潤を認めた.免疫染色では,炎症細胞の主体はCD4陽性T細胞であった.上記より原発性シェーグレン症候群による筋炎と診断し,ステロイド治療を行い,症状は軽快した.シェーグレン症候群による筋炎は,進行が緩徐で,診断が遅れることが知られている.本症例も筋炎の診断までに数年を要しており,診断時には筋力低下が進行していた.シェーグレン症候群による筋炎は潜在性であることを認識すべきと考える.

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© 2010 日本臨床免疫学会
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