日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
症例報告
腎腫瘤様病変を認めた顕微鏡的多発血管炎の1例
山﨑 隼人宮部 斉重友石 純三河合 繁夫伊藤 栄作長坂 憲治
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 34 巻 3 号 p. 162-167

詳細
抄録
  症例は63歳男性.数ヶ月にわたる微熱と体重減少,四肢の痺れ,紫斑が出現し入院.下肢に末梢神経障害を認め,紫斑の皮膚生検で血管炎の所見を認め,血管炎症候群と診断.MPO-ANCA, PR3-ANCA, ANCA(間接蛍光抗体法)は陰性,副鼻腔や肺に血管炎を示唆する病変はなかった.CTで右腎に径6 cmの辺縁不整な腫瘤様病変を認め,腎細胞癌に伴う血管炎症候群を疑い,右腎摘出術を施行.しかし,病理所見では巨大な梗塞巣と,弓状動脈,葉間動脈,腎周囲小動脈の血管炎所見および半月体形成性腎炎を認めたため,顕微鏡的多発血管炎と診断.術後に紫斑が拡大,四肢筋力低下が悪化したため,術後2日目よりメチルプレドニゾロン250 mg/日を3日間投与の後,プレドニゾロン60 mg/日を開始し,いずれの症状も速やかに軽減した.血管炎症候群では,悪性腫瘍との鑑別が困難な腫瘤様病変を認めることが報告されているが,本症例は無症候性の腎梗塞により腫瘤様病変をきたしたと考えられた.腎腫瘤様病変を伴う血管炎の鑑別は慎重に行う必要がある.
著者関連情報
© 2011 日本臨床免疫学会
前の記事
feedback
Top