日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
敗血症性肺塞栓および肝膿瘍を併発したFusobacterium necrophorumによるLemierre症候群の1例
山本 栄治深江 智明河合 康史神尾 学本多 英喜福味 禎子中川 充松永 敬一郎沼田 裕一
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2011 年 34 巻 5 号 p. 431-437

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抄録

  抗カルジオリピン抗体の一過性上昇を示した,Fusobacterium敗血症の1例を経験した.症例は24歳,男性.発熱,頭痛で発症し,救急車で来院.項部硬直なし,体温39.5度,WBC15200/μl, CRP 22.6 mg/dl.入院後,後頭部痛,咳嗽あり.CX-Pにて両下肺野に浸潤影を認めたため,クラリスロマイシン内服を開始.症状改善せず,第8病日に抗菌薬をパズフロキサシンへ変更.胸腹部CTにて両側肺に複数の不整小斑状結節像を認め,肝右葉上部に径3 cm強の円形低吸収域を認めた.血液培養よりFusobacterium necrophorumを検出し,敗血症性肺塞栓ならびに肝膿瘍を伴ったFusobacterium敗血症(Lemierre症候群)と診断した.第10病日より,抗菌薬をパズフロキサシンからアンピシリン/スルバクタムヘ変更.その後解熱したが,再び38.4度の発熱があり,クリンダマイシンを追加した.肝膿瘍の消失まで53日間の抗菌薬点滴を必要とした.抗カルジオリピン抗体は第21病日に67.1 U/mlと上昇を認めていたが,治療に伴い,第51病日には,29.2 U/mlまで低下した.Fusobacterium感染症では抗カルジオリピン抗体が上昇することが報告されている.今回の症例では抗カルジオリピン抗体が肝膿瘍の縮小に伴って低下していく経過が観察され,一過性の高カルジオリピン血症を呈していたと考えられた.

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