日本臨床免疫学会会誌
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総説
皮膚アレルギー疾患における核酸医薬療法
横関 博雄
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2012 年 35 巻 2 号 p. 107-111

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抄録
  成人発症の重症型アトピー性皮膚炎の患者が増加して社会現象の一つにもなっていたが,免疫抑制外用薬の開発により沈静化してきている.しかし,重症アトピー性皮膚炎の一部の症例では既存の治療法のみでは改善せず長年にわたり緩解,増悪をくり返すことがあり治療に苦慮する.遺伝子治療である核酸医薬の一つとして,おとり型核酸医薬(デコイ)が開発され,冠動脈疾患などに対する遺伝子療法として幅広く試みられている.また,最近,アトピー性皮膚炎の患者の治療にNF-κBデコイ軟膏が開発され現在治験段階になっている.一方,私達の教室でもIL-4, IL-13の重要な転写調節因子であるSTAT6に対するデコイ軟膏を作製して,重症のアトピー性皮膚炎患者への臨床応用も試みられ良好な結果が得られている.さらに,RNA干渉は近年注目されている現象であり,ターゲットとなる遺伝子と同一の配列を持つsiRNAを導入することにより標的遺伝子がノックダウンされる現象である.最近,STAT6をターゲットとしたsiRNAを開発し接触アレルギー,アレルギー性鼻炎のモデルマウスを用いて炎症を抑制しうることを明らかにしたのでこの干渉RNAによる核酸医薬療法も紹介したい.今回,皮膚科領域におけるアレルギー疾患への核酸医薬の有効性について述べ臨床的応用の展望を語りたい.
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© 2012 日本臨床免疫学会
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