2012 年 35 巻 4 号 p. 339b
アトピー性皮膚炎において病勢と一部の血清ケモカイン値が相関することが知られているが,その中でどの物質がかゆみに関与しているのか判断するのは難しい.それは自覚症状であるかゆみを客観的に評価,比較することは難しく,また病勢が大きく変化すると多くのサイトカイン濃度が同時に変化してしまうためである.そこで比較的病勢が落ち着いている外来患者において複数回血清を採取し,同時にかゆみの評価を行うこととした.当科外来に通院中の患者のうち,同意を得られた10人に対し,8週の間隔をあけて血清採取と同時にかゆみをvisual analogue scale (VAS)で評価した.ELISA法にてIL-8, MCP-1, RANTES, MIP-1α, MIP-1β, IP-10, I-TAC, MIG, eotaxin, TARC, MDC, GROαの濃度を測定した.ケモカイン同士またはVASとケモカイン濃度の相関についてはスピアマンの順位相関を用いて検定した.患者10人20検体について,ケモカイン濃度の相関をみたところ,MIP-1αとMIP-1β, TARCとMDC, MIG, IP-10, I-TACの3者間に正の相関があった.興味深いことに,好酸球遊走因子であるeotaxinは,IP-10, I-TAC, MIGなどのTh1系ケモカインと正の相関があった.またGROαはMIP-1α, IP-10, I-TAC, MIG, eotaxinなど多数のケモカインと相関があった.次にVASの変化量とケモカインの変化量の相関を検討したところ,VASの変化量とTARCの変化量の間には正の相関があり,I-TACの変化量とは負の相関があった.