抄録
【背景】関節リウマチ(RA)の罹患関節では破骨細胞による骨吸収亢進の病態が形成される.中枢神経障害を合併する RA では麻痺側の骨破壊抑制が知られ,骨破壊病態と神経系の関連が示唆される.今回,神経系と骨系の連関を解明するために,ドパミン受容体シグナルを介するヒト破骨細胞への直接的な影響について検討した.
【方法】健常人より単球を分離し,破骨細胞分化因子刺激下で培養.破骨細胞の分化・機能をTRAP染色及びpit formation assay,培養開始後のカテプシンK, NFATc1発現レベルをqPCRを用いて評価.また,細胞内cAMP assayを行った.
【結果】培養前及び培養4日目のヒト破骨細胞前駆細胞は,D1~D5ドパミン受容体を発現していた.破骨細胞分化因子と同時のドパミン(10 nM)添加により,14日目のTRAP陽性多核細胞は濃度依存性に有意に減少した(366±36→87±24/cm2).また,D2様受容体作動薬の添加でも,TRAP陽性多核細胞は減少した.また,ドパミン及びD2様受容体作動薬は,カテプシンKを有意に抑制し,pit吸収窩面積を減少させた.さらに,培養4日目の細胞内cAMP濃度,14日目のNFATc1も有意に抑制した.
【結語】ドパミンD2様受容体シグナルは,細胞内cAMP濃度低下,NFATc1発現抑制を介して破骨細胞分化を抑制したと考えられる.D2ドパミン受容体シグナルが直接的に骨吸収を抑制する事を初めて明らかにし,ドパミンを介する神経系と骨系の機能連関の可能性が示唆された.