日本臨床免疫学会会誌
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総説
ヘルパーT細胞を軸とした癌免疫応答の制御—基盤研究から次世代癌ワクチン,H/K-HELPの発見まで—
西村 孝司
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2012 年 35 巻 5 号 p. 412-423

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抄録
  CTLの活性化に焦点をあてた癌ワクチン治療で,癌患者の生存日数は延長したが,未だ期待されたほどの成果は得られていない.この敗因の主な原因として(i)担癌生体における強い免疫抑制,(ii)ヘルパーT細胞活性化を無視した,こと等があげられる.我々は,これまで,担癌生体の免疫抑制,癌エスケープ機構を打破して,癌特異的なCTLを誘導するためには,Th1主導免疫の導入が重要であることを提唱してきた.この基盤研究を臨床研究に結びつけるために,ヒト癌抗原(MAGE-A4とSurvivin)の新たなヘルパーエピトープを同定した.さらに,ヘルパーT細胞とキラーT細胞の両者を活性化できるHelper/killer-hybrid epitope long peptide (H/K-HELP)を開発して,H/K-HELP癌ワクチン治療の第一相臨床研究を開始した.従来のショートペプチドに比べて,ワクチン開始早期に癌特異的抗体(Th1依存的IgG1やIgG3)の上昇や癌特異的Th1, Tc1の活性化が多くの患者で確認された.臨床効果としては,大腸癌の増殖抑制やトリプルネガティブの転移性乳癌の消失が確認された.従ってH/K-HELPロングペプチド癌ワクチンは,革新的次世代癌ワクチンとして期待される.
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© 2012 日本臨床免疫学会
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